短編 | ナノ

 02

私の席は、窓際の一番後ろ。有早君とは席替えで初めて隣の席になった。


その席は、午後の授業では、暖かい太陽の光が注ぎ、お昼寝にはピッタリな席である。
しかも、先生からはあまり見えない位置。中学生は多忙で疲れているのだから、うたた寝する程度、許して貰えるだろう。


隣の席の有早君は『少し変わっている』と言われていたから、どんな子なんだろうなー……とここ一週間くらい授業中やそれとなりに気にしてはいた。


「……」


カチカチ、カチチカチ、カチカチカチチ!


有早君はここ一週間……一時間目から六時間目まで全力でゲーム機を操作していた。


隣からカチカチカチカチなにをやっているのだろう? と思ってそっと覗きこんだら、最近話題の携帯ゲーム機をすごい指の運びで操作していた。


その目はボタンなど見ることもなく、ただ一点画面に注がれている。真剣に、ただその場面をクリアするがために、この授業一時間を費やす有早君……。


生半可な集中力ではない。


一度も授業の板書をすることもなく、先生が来たら気配を敏感に察知しサッと机の中にゲーム機を隠す……。


恐るべき技術……なんてカッコ良く言ってみるけど、授業をサボってゲームを全力でプレイしてるだけですよー。


なんというか、うん、有早君は変わってる。


でも、スゴい。


クラスの男の子達には、"ゲームの神様"なんて言われてるし、授業が終わった瞬間、男子から有早君は囲まれる。どの面いった? とか有早スゲー! なんて声がちょくちょく聞こえたりして、キラキラした目で見られるのだ。


女の子達は「ばっかみたい」と言ってるけど、ちょっと気になってるみたいで、チラチラ有早君を見てる。


みんなから注目を浴びているのだ。


まるでヒーローみたいに。


有早君は、私みたいな「窓側の端っこだし寝れるかなーでも先生に怒られるのはやだなぁ」なんて思ってるチキン野郎とは違う。


授業中に全力でゲームをする有早君を尊敬する。


キーンコーンカーンコーン……


ああ、もうすぐ授業が始まる。


有早君はゲーム機を準備して、今日もゲームを全力でプレイするのだろう。


今度、有早君に話してかけてみようか、と思いながら私は少しワクワクした気分で、シャーペンを手に取った。



気になる君。
(有早君は勉強どうしてるのかな?)



2011/12/07 騎亜羅



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