03
すると――
「あーら、殿下じゃないの」
突然、聞こえてきた声に驚ききょろきょろと見回すと吹き抜けの二階の階段欄干に、少女が居た。
「殿下と呼ぶなと何度言ったら分かる、小娘」
「殿下が私を名前で呼ぶならやめるわ、で・ん・か」
階段から降りてにっこりと笑いながらわたしたちの前に現れた少女は、カズマさんに馴れ馴れしく話す。
アーモンド型の大きな瞳が印象的な少女。モデルみたいに美人で、綺麗な子だ。
思わずまじまじと見てしまい、途端、目が合う。大きな瞳がさらに大きく見開かれ輝く。えっ!と思った時には手を握られ、嬉しそうに話しかけられていた。
「ああ、ごめんなさい!私は雪白あやめ。16よ。貴女が殿下のお嫁さんのリンさんね。きゃー!可愛い!ちっちゃい!かーわーいーいー!お人形さんみたい!」
「えっ、えぇ、っと」
「ねえねえ、今友達も居るんだけど可愛い服着てみry「あやめ様、リン様が困っていらっしゃいます」あら、ごめんなさい!こんな可愛いお嫁さん、殿下にはもったないわー!」
口を挟む間もなく話されうわぁぁと思っていたらカズマさんに肩を引かれ「来い、リン」と背中に隠される。
「小娘……よく動くその口、一生利けなくしてやろうか」
「きゃー、こわい。リンさん可愛いんだもの。あ、リンさんちょっと殿下を借りても良いかしら?」
間髪入れない申し出に「え? あ、はい?」と曖昧な返事をしてしまった。
「おい、勝手なことを……」
「美嶺、リンさん頼むわね」
そう言ってあやめさんは、カズマさんの手を掴み「早く、殿下!」ぴゅーとどこに行ってしまった……。
「あやめさま!……リンさま、主が申し訳ありません……」
「い、いえ……」
ここに来てからわたしは、ぽかーんとするばかり。あやめさんの強引さに……カズマさんが嫌そうじゃなかったのが、ちくっと胸に刺さった。
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