ハッピーエンドは世迷言
2014/01/04 22:27




その男と出会ったのは、失恋しヤケクソ気味に夜の街を歩いていた時だった。


「なんだァ、ガキィ?」


返り血を浴びながらだるそうに笑う男。手元は一寸も狂わず襲いかかってきた男の頸動脈を切り裂いた。



闇に煌めいた鮮烈の赤が、俺の頬にかかった。



人間が原始から持っているセンサーが反応している。この人間はヤバイ。俺は普通の世界から別世界へ飛び込んでしまった。


心臓が早鐘を打つ。
全身の血の気が引いていく。
手に背中に冷や汗が湧き出る。


「見られちまッたなァ……」
「……ッ」


男は手に持ったナイフを一回転。手に取った瞬間、刃先は俺に向かっていた。


「ゴメンねェ?――死んでェ」
「……!」


――神様。なんでなんだ。今まで真面目に生きてきて失恋した上に路地裏で死ぬなんてあんまりだ。ホモを貫けば良かったのか。失恋してホモだって寂しいんだ。夜の街をさ迷いヤケクソで脱童貞をしようと思って悪いのか。ケバい女に迫られて吐きそうになって路地裏に来たわけだから自業自得と言えばそうだ。


刃先が目前に迫る――あぁ、俺は死ぬのか。


――最後に、叶わぬ恋だと分かっていても君が好きだったと伝えたかった――。


〜♪〜♪♪

「ア゛?」
「ひ……」

眼球をくり貫こうと瞳孔前に繰り出されたナイフ。それが携帯の電子音で邪魔されまだ両目が見えた。


「ッンだよォ!ア゛ァ゛?応援ン?ッゼェ…ッ死ね」


乱暴に電話に出て切り携帯を地面に落として何度も何度も足を打ち付けて破壊した。


「ッゼェ!ッ死ね!萎えたじゃねェかァ!邪魔すんじゃねェ!!クッソッが!」


男の破壊行動は続く。周りに転がっていた人たちに殴る蹴るの暴行を繰り返す。


もしかしたらあぁなっていたかもしれないと思うと血の気が引いた。逃げるのは今しかないと自分の足を叱咤し、必死に逃げた。




今日あったことは、悪夢だと思いたい。




だが、寮に帰って鏡を見たとき頬についた赤黒い返り血が……夢だと思い込ませてくれなかった。







……このあと、市来が殺し損ねたーって久崎先輩に関わっていきます。かなり王道ww市来は高坂組とかにも関係あるんじゃないかな!かな!!


▼Title by誰花



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