ぶきふたっ!(If) 「覆い尽くされた感情」新(+久)←一
2013/12/23 22:21


 「…新見どォしたんだよそれェ」
「久崎に借りたんだ。あったかい……」

11月になり、だんだんと冬に近づいてきたころ。資料室の住人・新見新を訪ねた彼女の幼馴染み市来優哉は、目を見張った。

新見が羽織っていたのが、明らかに男物の淡い茶色のカーディガンだったからだ。女子の平均身長より大分低い新見には本当にぶかぶかだ。袖は20センチ以上余ってるし、裾はスカートの半分を覆っている。

「……ぶかぶかァ、じゃん」
「だからこそ良いのではないか! スカートは寒くて敵わん。これならスカート丈までカバーしてくれる」

新見はほくほくとした顔でぶかぶかのカーディガンを大事そうに羽織る。その姿は可愛かったが、市来は気に食わない。

「……」

新見が久崎のカーディガンを大切そうに着ているということに、ムカムカした。

「市来、どうしたんだ?」

市来は急に着ていたカーディガンを脱ぎ始め、「ん」と新見に差し出した。

「は?」
「……そんなにさみィなら俺の着ろ」
「はぁぁ? どっちだって変わらないだろ……」

新見は市来の意味の分からない行動に首を傾げる。市来は「いいから着ろォ」と言って、無理矢理新見が着ていた久崎のカーディガンを脱がせ、自分のカーディガンを着せた。

「わっぷ…っ! 何を……」

そしてそのまま新見を抱き上げ、手近にあったソファーに自分が座ってから新見を膝の上にのせた。

「これであったけェだろォ?」
「…あったかいってな…まぁ…その…落ち着く……」

市来は後ろから新見の腰に手を回し、肩に顎をのせる。新見は「いつもの」態勢に顔を緩ませた。

「人肌ってぬくくてすきだ……」
「くくく、そォかよ」


市来は満足そうに笑い、新見の抱き締める力を強めた。


∴覆い尽くされた感情



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