24-kiara | ナノ

Diary


 酒は飲んでも飲まれるな



「ふわぁ……え、もう12時?」

秋穂は、携帯で時間を確認し随分と新しく買った文庫本を熟読していたことに気づく。いっけね、と薄暗がりで夢中になって読んでいた文庫本を閉じた。明日は休みだが、部活はある。起きれるかなあ、と思いながら布団に潜り込む。
携帯できちんとアラームをセットし、目を閉じた瞬間、けたたましく着信を知らせる音が鳴り響いた。

「うわ!? び、びっくり!」

飛び起きた秋穂は携帯を開と、表示された名前は「坂城正紀」。嘘! と思わず飛び出た本音に口元を抑える。

(自分からは電話もメールもしない坂城さんがうちに電話? あげくに坂城さんの方から電話して、とさりげなく言ったら「用がない」と一刀両断し、「別にそんなにメールしなくていい」と言って来た坂城さんから?)

『通話』のボタンを押そうか押さないか迷っていると、携帯を開いていたせいか勝手に繋がってしまった。

『おい』
「えっ!」
『おいっ』
「はいっ、なんですか!」
『俺だ』
「俺だって、坂城さん……もしもし、うちですけど」
『でたなら名乗れ。それもできないのか』
「はあ……」

急に繋がって驚いた秋穂は、坂城の偉そうな言い草に呆れる。

『なんだその間の抜けたこえ』
「はあ……この夜中になんですか?」
『べつに』
「……べつにって」
『……おまえがかけてこいって言ったんだろうが。だから電話した』
「ごめんなさいおやすみじゃあね」

秋穂は勢いのまま通話終了ボタンを押し「誰もそんな風に言ってないしそれ二ヶ月も前の話だしなんなん!?」と布団をかぶる。

すると、また電話が鳴った。秋穂は無視するが、1分経ったあたりで根を上げた。

「しつこい!」
『どうしてきった』
「うちもう寝る!」
『俺はねない!』
「坂城さんどうしたんですか……なんか変」
『べつに』
なんだか、随分と幼い物言いに秋穂は「あ、酔ってます?」と聞いた。


『はあ? よってない!』
「はい酔ってますねー酔っ払いは寝てください」
『よってない。大体、なんだ、人がせっかく電話したのにきって』

ブツブツと文句を連ねる坂城に、眠い秋穂は「はいはい、そうですか。わざわざ連絡してくれてありがとうございます」と軽くあしらう。酔っ払いに何を言っても無駄だと、あくびをし、電話を耳にあてながら布団に横になる。

(酔っ払いってなんでこう面倒臭いんだろう……坂城さんは酔うと説教する人なのか)

うつらうつらとしながら適当な返事を繰り返す。すると坂城が『真面目にきけ!』と怒った。

「きいてますよー」
『きいてない。おまえな』
「ふわあ」
『真面目きけと!』
「うん、うん、うちもうねたいなあ」
『ねるなあほ。もっとつきあえ』
秋穂は寝落ちる前のふわふわした感じが心地よくて、そのうち坂城の声も遠くなってきそうになる。
『なあ、おい……ねたか?』
「んー」
『おれは、もっと秋穂のこえがききたい』
「ぶほっ! なっ、なっ!?」

真剣味を帯びた声に、秋穂は飛び上がりかなり動揺する。

『だめか』

追撃のように、しょんぼりと言われて秋穂が落ちた。

「……あと10分なら……」





そうして夜はふけりーー




朝が来る。


「う、う……きもちわるい……いま、なんじだ……」

友人宅の床で寝ていた坂城は、未成年ながら昨日しこたま先輩に飲まされたせいか、記憶が曖昧だった。吐き気と、頭痛が酷い。

「7時……ん……? あ、」

だが、携帯で時間を確認したあと、不意に蘇る深夜未明の自分の行い。
彼女に電話をかけて、グダを巻き、甘えたようなことを散々言ったことをーー

「っ!!」

二日酔いで痛む頭を抑えながら、リダイヤルで秋穂に電話をかける。秋穂はすぐにでた。

『……秋穂だけど』
「昨日、言ったことは忘れろ」
『は?』
「昨日、電話してぐちゃぐちゃ言っただろ! 全部忘れろって言ってるんだ!」
『……』
「おい、秋穂? いいか、忘れるんだ……あれは俺じゃない!」
『ふぅん……しらない』
「しらないってお前な!?」

ーー坂城はここで秋穂に謝るべきだった。


ドンっ!と何かを蹴り上げる音が聞こえて、坂城の頭が痛む。そしてまくしたてるように秋穂の言葉が続く。


『……ッ偉そうに電話かけてやったのにってブツブツ言って、人がもう寝るって言ってるのに寝るな寝るなって怒鳴って寝ようとすれば甘えた声出して、散々グダ巻いたあと先に寝落ちして、謝るでもなく朝から怒鳴るような電話してきて……』
「あ、秋穂……?」
『ねえ、坂城さん……うち、それを忘れるほど馬鹿じゃありませんよ……?』
「あ、いや、そういう意味じゃ」
『うちのこと、なんだと思ってます……? 都合のいい人? 告白された時以外で、好きって聞いたことないし! キスはするくせに! それなら、そっちで新しい彼女作ればいいじゃん! うちなんかっ、用がなきゃどうでもいいんでしょ! 付き合ってらんない!』
「あき……っ」

ガチャン、と切られて坂城は青い顔をする。

「……さ、最悪だ……ちがう、ちがうんだ……」

坂城は頭を抱えて呆然と座り込む。穏和で怒ることがない、というより、どんな扱いをされても、笑って流してきた秋穂だが、さすがの坂城の横暴に耐えきれなかったのだろう。……というより、常時あの扱いなら、キレないほうがおかしい。

「どうでもいいわけ、ないだろうが……つ……あたまいたい……」

この時坂城は軽く考えていた。
秋穂のことだ、謝れば許してくれるだろう、と。
だが、秋穂は坂城に連絡をとることはなく、坂城が直接謝りに来るまで、その怒りは続いた。
しばらく、坂城の枕は、涙で濡れた。




∴酒は飲んでも飲まれるな











基本坂城大好きどんな扱いされてもめげない鋼の精神秋穂ちゃんだけど、坂城がツレないあまりに横暴過ぎてキレた。←
「しらなーい」「うちなんかどうでも良かったんだってー」「……坂城さん……ばか、ばかぁぁぁぁ!!」
坂城は遠距離で秋穂ちゃんに甘えすぎた。ツン、としてるけど秋穂ちゃんから連絡待ってる。自分から電話したりメールするのが苦手。
このあと連絡を取りもしないのはあんまりじゃないか、と坂城もキレる。でも電話もメールも来ない日々に不安になって「連絡が来なければ……自然消滅……?」「秋穂と別れ…る…( ゚д゚)ェ……」「( ゚д゚)……い、嫌だァァァァ!!!(号泣)」←やっと事の重大さに気づく
坂城と笑って付き合える人そうそういない。偉そうな上に、見下した喋り方、忙しいからそうそう会えないetc……秋穂ちゃん……別れなよ……←
今回坂城酒に飲まれてアホめ。
このあと謝り倒して土下座コースです。



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