24-kiara | ナノ

Diary


 【中編】世界が君に優しかったなら【未完】

※天使と死にかけた少女と死にかけてる少女のお話。未完結。受験終わって落ち着いたら中編に移してちゃんと書きます。推敲してない、ただの@@netaと考えてください!









ヒュゥゥゥ……

秋の冷たい風が少女の頬を撫でる。冷たい風は身に沁みる。少女は身を震わせ、寒さをやり過ごす。

少女は夜中でも艶めく長い黒髪を手ではらおうとして……それがないことに気づいて苦笑した。首元がやけに寒かった。

そして……少女は、ゆっくりと……死へ、向かっていった。

少女はありふれた気の弱くも思いやりのある子だった。よくあるグループに居て、曖昧に笑い自分を守っていた。彼女のその態勢が崩れたのは、「いじめ」だった。高校で一番に仲良くなった友達がいじめられたのだ。彼女は迷い……自分のなかにあった、ほんのちょっぴりの正義感に従って友達を助けた。

それが間違いだなんて……地獄の始まりなんて、誰が知ろう?

結論を言えば、今度は彼女がいじめられた。彼女が、友達と思っていた他人は誰も助けてくれなかった。

助けた他人も、周りも誰も、いじめを止めようとはしない。定型的な地味で陰湿ないじめばかり繰り返された。そこに男子が立ち入り、暴力が奮われた。

――負けるもんか、と彼女は踏ん張っていたけれど、それも今日で心が折れた。

唯一、自慢で誇れた長い黒髪が切られたから。

たったそれだけで、人は絶望する。

彼女にとっては「たったそれだけで」のことではないのだから……。



ビュゥゥゥ……

「……高い、ね」

ここは、中学校の屋上。風で制服のプリーツスカートが揺れる。どうせならここで死んでしまおう、と少女は決めていた。欄干に立った彼女。不思議と心は落ち着いていた。

一歩踏み出せば終わる。それだけが救いだった。

疲れたなら、休んでもいいよね……?


誰に問いかけるわけでもなく……自嘲して彼女は、飛んだ。




『――……もったいないなぁ』




少女は、飛んだ。確かに訪れた浮遊感と前後不覚に陥る感覚。でも、死は訪れなかった。
「う、浮いてる?」

地面スレスレに、自分の体が浮いていた。はた目から見て格好は間抜けである。両手両足を広げ、そのまま急停止したような格好。ビヨヨーンと上に跳ね返りそうだ。

「な、なんで…」

困惑と驚愕が少女を襲いペタペタと自分の頬をさわったりつねったり……「ぃはい……」ということは現実。

ひゅっ、

「だ、誰!?」

そして――瞬間的に少女の目の前に現れたのは、長髪の青年。むーと口を尖らせ、少女に向かってこう言った。

『もったいないし、もったいない、君の命もったいない!』
「は、はい!?」


ビシッと指を指されてそう言われ、間抜けな格好で目を見開く。

『もったいないって言ってるの。若い身空で見投げなんて――もったいない!!』
「あ、あなたには関係ないでしょう――!」

なんだかよく分からない長髪の青年に「もったいない」と連発され、少女は不条理に怒る。わたしの気持ちも知らないくせに。どうしてそんなことが言えるの?

『君の気持ちなんて知らないさ。もったいないからもったいないって言ってるの』
「!?」

口に出さなかったことを言い当てられ、少女は慌てる。

「な、なんで……?!」
『そりゃ、分かるよ。大体人間って怒るときはそういうことを考えてるって教わったからね』

長髪の青年は長い髪をかきあげ、さも当然という風に言う。少女はわけがわからず「あなたは誰……?」と訝しげに聞いた。

なんとなく……今の状況から考えても目の前の長髪の青年は、人ならず者であることは分かったいるけど、聞くのが礼儀で混乱している頭ではそうとしか言えなかった。

長髪の青年はその問いを待ってました! と言わんばかりに食いつき、ふにゃっと笑って答えた。

『俺は天使。神に仕えるえんじぇう! よろしくさんきゅーっ』
「そんなチャラい天使居て良いの!?」

長髪の青年の自己紹介は……思わず突っ込んでしまうほどのチャラいさだった。




『はいっ』
「あ、ありがとう…」

青年はにこりと少女に笑いかけながら、缶のおしるこを手渡した。天使なのに…おしるこ。このセンスはなんなんだろうか。

青年に自己紹介をされたあと、「とりあえず腰を落ち着けて話そうよ」と言われ、二人は近くの公園のベンチに並んで座っていた。

『あ、分かってると思うけど今は時間止まってるから誰も来ないよ』
「はぁ……」

少女は半ば信じられなかったが、公園の時計は11時前で止まってるし、その前にも青年の「アイヤッ」という掛け声と共にここに移動してきた。

……天使は、荘厳で西洋の方の神の使いというイメージが強いのだが……先の掛け声は中華っぽいし、飲み物の差し入れはおしるこ……少女は、西洋はアジアの天使なの? ていうか、アジアって天使いるの? という疑問を持ってしまう。

「…天使、なんですよね」
『そうそう。天使の弥太郎君でーす』
「純日本人!?」
『ヤタって呼んでー。かわいいアダ名っしょ?』

少女は思わず、かるっ! と叫んだ。目の前にいるのは天使じゃなくて普通のチャラい高校生にしか見えない。天使? ホントにこの人天使? 実は、いじめっ子たちにからかわれてるんじゃ…? それにしては手が込んでる…。

「あの…天使なら頭にわっかとか…」
『あぁ、天界の経費削減でなくなっちゃって……』
「経費!? 天界に経費なんてあるの!?」
『いやー、今年の夏は暑かったからね。エアコンに使いすぎでわっかに電気送れなくなっちゃって』
「しょ、所帯染みてる!天使なのに!ていうか、あのわっかって電気で光ってたんだ!?」
『天界だってこの世界とそう変わりはないさ』
「そ、そうなんだ……」

突っ込みどころ満載な青年……天使・ヤタの発言に、天使のわっかを廃止した滅茶苦茶な天界に興味が湧く。それと同時に少女は理解して行った……こんな人並み外れたことが出来るのは、人ならず者だろうし、天使なんだろう…という納得をした。

『まぁ、天使って分かってもらえたらそれで良いんだけど。君を助けたのは、命を捨てるのはもったいないよ、って言うためじゃないんだ』
「はぁ…」

そうだろうな、というのは検討がついた。いちいち「命もったいない!」と言って天界の天使や神様が止めてくれたら、日本や旧社会主義国の自殺率はもっと低い。

それに、神様が人の死に関わって良いものだろうか……とも思った。

『実は、今にも死にそうな子が一人いるんだ』

ヤタは少しも重い顔もせず、そう話を切り出した。

『その子は病気で病院から一歩も出たことがなくて、もうすぐ…息絶えようとしている』
「……」
『ちょっとその子にお世話になったからさ、恩返ししたいんだ。だから、君が死ぬ前に君の体貸してよ。一日でいいんだ』

どこまで軽い調子で、簡単な言い方で、そんな頼みごとをしてきた。少女は呆気に取られるが、ヤタの目はじっと少女を窺っている。しばらくにらみ合いが続き……少女ははぁ、とため息をついて「……いいよ」と言って白旗を上げた。

『ホント!?』
「死に損ないの体でよければ…貸すよ」

ヤタの真摯な目に負けたのもあるし、死ぬ前に良いことをするのも…まぁ良いだろうと、了承した。

『よし、じゃあ一日だけ"生き替わる"からね』

ヤタは嬉しそうに言い、張り切ってなにやら唱え始めた。

『オンサバビバオンサバビバ…天使---の名により---,---ッ--,---ァ---ッ…アイヤーッ!』
「だから、なんでそんな呪文なのー!?」

パァァァ…と周りが光るなか、少女はそう突っ込んだ。光りが収まった後……辺りは、静寂に包まれ時も正確に動き出した。静かに吹く…風だけが成行を見守っていた……。




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