全ての始まり






――ただただ、懇願して泣き叫ぶ。

そんな日々を続けるぐらいなら――…






Opening:全ての始まり







『やめてぇっッ…!!お…ねがいッ…!!』


悲痛な声が響く、冷たい石畳の牢の中にその声は反響したがすぐに空気と化す

格子に阻まれて手しか出せない状況で私は必死にその子供に手を伸ばした



『…だめ…!!連れて行かないで!!』

「っうるせぇな!!黙ってろ!!」

『ゔぐッ…』




牢屋の外から白の服に身を包んだ男が私の腹部を思いっきり蹴った

運悪く肺の近くに足が当たった為に息がヒュッと音を立てて吐き出された

石畳に打ちつけられた身体のいろんな所が痛い

それでもえづきながら私は立ち上がると、足に掛けられた足の錠から鎖の音が空しく反響した

連れて行かれそうになる少女が「やめてぇッ!!」と叫ぶ


少女の姿はぼろきれのような服に、その切れ間から見え隠れするあばら骨、



――それに対照的に輝く少女の蒼の髪と瞳





「大丈夫だよ、帰ってくるから」






やさしい微笑みを浮かべ扉へと無情にも消えていく、





私は少女を格子越しに悲痛な表情を浮かべ、見つめることしかできなかった





『…“3人でここから出る”って約束したじゃないか』




どうして、どうしてなんだよ


まだ瞳の裏に残るその少女の残像を抱きしめるように自身の肩を抱く

よく3人で言い合ったその言葉を震える声で紡ぐ




「おねぇちゃ…、おねえちゃ、が…ひっく」

『大丈夫、お姉ちゃんは“しなない”よ…大丈夫』

「…うん」




先ほど連れていかれた少女のことで体育座りしていたもう一人の少女が私にしがみついて泣きだした



連れて行かれた少女…あの子は私の姉そして私のもとで泣くこの少女は妹
酸いも甘いも一緒だった家族だったからこそ、残酷な運命の悪戯。

自分だって行ってほしくなかった、2人だけじゃ不安だよ…




あの扉の向こうへ行ってしまった様々な子供はみんな帰ってこない。昔は今よりこの牢は多くの泣き声で満ちていたのにだ

外から微かに臭う、鼻が曲がりそうな匂いの正体に気がついた時冷水を頭からかぶったような感覚に襲われた



――今ではもう私達2人ぐらいなものだ







「私が2人の前に行きます」

それを分かってお姉ちゃんは――…

いまだ泣く妹を今度はしっかり腕の中に閉じ込めた






―――そう、私は無力だったんです






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