この臭いを乗り越える以前の問題 | ナノ





今まで普通に生きてきた。
産まれた土地から離れた事は無く、二階建ての一戸建てに家族六人で住んでいる。兄と妹がいて、自分は三人兄妹の真ん中と言う極めてちょうど良い立場で両親とも適度に仲も良く、家庭崩壊はテレビの中の他人事だと胸を張って知らん顔出来る。
中学の頃には何人かとお付き合いをさせていただいた事もあるし、フった事も、勿論フラレた事もある極めて凡庸な人生を送ってきた。ついこの間迄の十六年間、そうやって過ごしてきたのだ。
なのについ先日、無理矢理キスをされた。まぁ、普通だったら嬉しくはないが激怒するまでも無い記憶に残る青春の1ページに成ったんだろう。
だが、そうは成らなかった。何故なら普通じゃなかったからだ。キスをしてきた相手は何と同性だったのだ。しかも舌が入ってきた。いや、それよりも廊下と言う衆人に晒された状況だったという事が何よりも不愉快だ。
クソ。おぞましい。
だが、そのおぞましき行為を働いた人間は今自分の目の前で人の食事風景を見て、凄まじく眉をひそめ嫌悪を露にし恐怖している。
其れを見ると、その原因である物が一層美味しく感じるのだから相当目の前の性犯罪者を嫌っているんだろう。

「そ、そ、それは、納められるべき畑のお肉……ッ」
「ええ、納豆ですけど何か?」
「臭いでしょ、ぺってしなさい!ぺっ!」
「嫌ですよ勿体無い。それに美味しいですし。」
「美味しいわけ無いよぉぉぉ!何でそんなの食べてるの!?腐ってるのに!」
「何でって、この前キスされたので自衛です。」
「えっ」
「納豆好きですし。」
「も、もしかして……、」
「勿論 朝、納豆を食べました。昼、納豆を食べました。夜、 納豆を食べました 。大丈夫です、この世の何より納豆を嫌っている先輩と違って納豆大好きなので問題ありません。」
「…… まだ怒ってる?」
「いやぁ〜ごめんね!一目惚れしちゃったからつい!大丈夫 お付き合いして責任とるから★ 」
「……。」
「謝罪された記憶がないんですが。」
「スミマセン。本当にごめんなさい。誠に申し訳ありません。」

机に額をつけて謝罪する先輩を納豆巻きを食べながら鼻で笑う。

「謝罪で済めば懲罰なんて無いんですよ先輩。」
「うわぁぁぁぁすみませんでしたぁぁぁ!」

泣きながら床に土下座する先輩の頭を見下ろしながら、この納豆臭い口にも同じ事が出来たら考えてやらん事もないと、実はどこかで思っていたりする。

「でも、巻き寿司くわえてるのってエロいから、具のチョイス以外はナイスだよ!」
「馬鹿ですね。納豆喉に詰まらせて窒息する寸前でうっかり飲み込んでしまえば良いのに。」

のを教える気はこんな事を言ってる限り永遠に皆無だ。
お友達にもなってやるもんか。






この臭いを乗り越える以前の問題










ドリーマンの法則様に 投稿させて戴きました。敢えて性別の固定はしていないのでお好きな方でどうぞ。以前の続きで参加させて戴こうと考えていたけど、台詞が素敵すぎて速攻やめた。←
のわりには短くて簡素だ('Å`)


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