窓の外には漆黒が広がり、それは一日の終わりを告げる。

「(どーしたもんかな……)」

勢い良くベッドに倒れ込めば、何度か跳ね返されるような感覚。
やがてそれは落ち着いて、自分が触れている場所から暖かさが広がってゆく。

「(全然、進歩しないよなぁ)」

此処に来て早くも二週間くらい経っただろうか。
出逢った頃と変わりない彼女に俺はかなり気が落ちていた。
このまま話しかけても彼女の心は取り戻せ無いんじゃないか……って。
そんな暗い感情に支配されかけた時。
携帯が着信を知らせてきた……電話のようだ。

「………もしもし」
『よ、明仁。生きてるか?』

出てみれば電話の相手はTinkerの仲間の暁良だった。
何の連絡も無いから、一応生存確認って事で、と笑い混じりに言う彼。
普段の少しきつめの性格からしても、心配されていた事は確かだった。
謝りながら、ちょっとごたついてて……と伝えると、何かに気が付いたのか暁良が声のトーンを低くした。

『……何かあっただろ』
「え?な、何だよ、藪から棒に」
『隠さなくてもわかんだよ、お前嘘つくの下手』

そんなストレートに言わなくても……と言うと、そんな事より何があったんだよ、と再び聞いて来る彼。
はぐらかす事は無理だろうと諦めて、俺は暁良に話し始めた。
今回の依頼内容の事。
その少女に話しかけようとも、一向に回復の兆しが見えない事。
やがて全てを話終えると、暁良は一言でバッサリと言い切った。

『ふーん……で?』
「で?ってお前!」
『別に俺が解決する話じゃないし、お前自身の問題だろ?』
「そうだけど……」
『……ひとつだけ、言わせてもらえば』

俺こういうの得意じゃねーんだよな……と呟いた彼は、ひとつ息を吐いた後に繋げた。

『お前が出来ないと思ってたら、誰にも出来ねーよ』
「あ…………」
『どんな形であっても、彼女の事を頼まれたのはお前だろ。……信じてやれよ』

そうだ。この依頼は俺だけが請けたのであって、他の誰かが携わってる訳ではない。
それはつまり、俺が諦めたらそこで全てが終わってしまうと言う事。
他に誰も居ない今、信じられるのは自分の力。
そして、彼女の可能性。
しつこい位に諦めねーのがお前だろ?と悪戯気に尋ねる彼に俺は目を閉じ呟く。

「…………ありがとう、暁良」



【信じる力はいつか実を結ぶ】



まだまだ始まったばかりだもんな。



∴2012/03/06

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