08

ひとまずは挨拶を交わして案内された先に腰掛ける。
すると大久保先生が一人の女性と一緒に近付いてきた。

「実習生の長月小依です。よろしくね、恋歌さん」
「あ、よろしくお願いします…」
「しばらく俺と一緒にリハビリしていくと思うから」

あたしの目の前に立ち止まった彼女は名前を名乗ってニコリと笑った。
後ろでひとつに髪をまとめていてスッキリとした印象をうける。

「恋歌さん、高校生なの?」
「うん。2年生ー」
「そうなんだ…何部?」
「えと、ハンドボール」
「ハンドボールかぁ、私はね、女子サッカー部に入ってたんだよ!」
「へえ……」

その明るい人柄にあたしの気持ちも和らいで、次第に普段のありのままのあたしで接するようになる。

「…何の話してんの?」
「うわ!」
「あ、大久保さん」

するとそこへ戻ってきた大久保先生。
後ろから来た彼にびっくりして、あたしはそのままのテンションで話してしまった。

「お、大久保くん!いきなり後ろから話し掛けないでよ!」
「………大久保、くん?」
「あ」

思わず先生の事を君付けで呼んでしまったのだが、彼はこれと言って怒る訳ではなく、逆に優しい表情を浮かべた。

「まあ、美羽音ちゃんが呼びやすいなら構わないよ」
「大久保先生、恋歌さんには優しいんですね」
「え゛、もしや大久保くんってリハビリスパルタな人!?」
「…そんな事無いけど?」
「絶対あやしい!」

なんか不安なんだけど…、と呟きながらもあたしはこの雰囲気に少し安堵感を覚えていて。
これから続くであろうリハビリの中にちょっとだけ楽しみが出来たのだった。



【08.あたしと彼と、もう一人】



しばらくは三人四脚だね。



∴2012/01/07

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