07

−−−数日後。
いよいよ今日は新しい担当の先生とのリハビリの日。
大久保…という言葉に何かを思い出しそうだったがそれも分からぬまま、今日の日を迎えた。

「こんにちはー…あ、アキくんだ〜!」
「美羽音ちゃん?」

リハビリ室に入ると、お母さんのリハビリ担当の伊澤明仁先生(あたしはアキくんって呼んじゃってるけど、)その彼が迎えてくれた。
彼とはちょっとした事情があって、お互いの顔は知っている。
い、一体どうしたの?と少し慌てている様子で、普通ならこの場所には訪れないであろうあたしの姿に驚いているようだ。

「あーお母さんと同じ靱帯切っちゃった」
「……本当に!?」

嘘だったら此処にはいないよ。と笑って言ったら、……つらいだろうけど頑張ってね。と頭を撫でてくれた。
ちょっとだけ、あたしの心が落ち着く。

「ありがとー……あ、」
「どうしたの?」
「アキくん、大久保先生って誰?」

再び浮上した疑問をアキくんに知ってる?と尋ねると、美羽音ちゃん会った事無かったっけ?と疑問で返されてしまった。

「分かんない。びみょーに記憶が有るようなー無いような?」
「多分会った事あると思うんだけど…」

あ、あの人だよ。と指差した先を向くと、其処には一人の男の人が居て、彼はあたしの前に歩み寄ってきた。

「……美羽音、ちゃん?」

開かれた口からあたしの名前が紡がれて、返事をする。

「あ、はい。あたしです」
「……リハビリ担当の大久保です、よろしく」
「よ、よろしくお願いします」

そう言った彼の顔をあたしはまじまじと見つめてしまっていた。

……この人が大久保先生?



【07.初めまして(?)こんにちは】



…やっぱり、何処かで会った事あるかも。



∴2011/12/12

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