04

すぐに医師からリハビリのオーダーが出て、あたしはリハビリセンターに向かう。
以前、一年程前だろうか?
その時も膝の痛みで一度お世話になった事があった。
大したこともなかったし、部活も休める状況ではなかったから数回行っただけだったけれど。
…またお世話になるなんて、ね。
一年前に担当だった優しそうな女の先生が迎えてくれて、松葉杖の使い方を教えてもらう。

「大丈夫そうかな」
「ほんと?」
「うん。腕の力あるし、安定してるし」

それ程苦もなく松葉杖に慣れて、今日のリハビリは終わり、と告げられる。
次の予約を入れるためにその場を少し離れていく彼女をみて、長い付き合いになりそうだなぁ、なんて考えてたらもう一度彼女が戻って来る。
そして予想もしない事を言った。

「あ、次回から担当変わります」

渡されたカードには次の予約の日時が書いてあって、ひっくり返すと、担当:大久保、とも書かれていた。

「……大久保?」

その名前を読んで、思い起こされるのは冬の体育館。
バスケットボールをついていた姿。
…あたし、どこかで……。

「長くなると思うけど、頑張ってね」

掛けられた言葉に意識が思考の淵から引き上げられる。
ありがとうございます、とお礼を述べてその日はリハビリ室を後にした。

カシャン、と松葉杖がつく度に音が響く。
部活の仲間にメールを打って、空を見上げたら、青い空に積乱雲が浮かんでいて。
眩しく照りつける太陽に何故だか腹が立った。



【04.それは心とは裏腹に】



大久保、という言葉にもやもやが晴れず、そんな心と真反対の一点の翳りも見せない明るい空が、恨めしかったんだ。



∴2011/12/05

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