23

その日の目覚めはすっきりとしていて。

「……よし!」

手術の翌々日からは熱も下がったし、管や機械も殆ど外してもらえていた。
今は長時間で無ければ松葉杖での片足歩行が許されるまでに。

「いつ来るのかなぁ…」

窓際にベッドを移動してもらったので、前に居た位置よりかは外の景色が見える。
高いビルとか、自分の地元とは違った都会の景色。
でも、あっちの方が落ち着くかなぁ、なんて思考を巡らせていたのだが。

「……おさんぽでもしてこよっかな」

お散歩と言ってもそんな長い距離ではないが、じっとしているのが性に合わなくて。
松葉杖を掴んで立ち上がる。

「さてと、」

カシャン、カシャンと杖を廊下に突く音が響く。
自分の一番歩きやすい速度、杖を突くテンポ。
何だか今日は調子が良くて、このまま外行っちゃおっかな…なんてエレベーターホールに顔を出した、その時だった。

「「「あ」」」

視線が合わさる瞬間、ぽろっと声を出してしまったタイミング、何もかもが一緒で。
うわーあたしたち同調してるよ何なのこれ。

「大久保くん、アキくん…」

その人達は間違いなくあたしのお見舞いに来てくれた大久保くんとアキくんで。
名前を呼ぶとハッとして大久保くんが近付いてくる。
そして、無言で近付いて来たかと思えば、いきなり人のこめかみをぐりぐりとしてきた。

「美羽音ちゃんは、一体何処行こうとしてたのかな…?」
「あたたたたた!いたいいたいやめてよー!!」

少なくともあたし怪我人だし片足着けないし、止めてほしいんだけど、な!
その隣ではアキくんが少し戸惑った表情をしながらも、こんにちは、と笑っていた。



【23.いいんだか、悪いんだか】



何なんだ、このタイミング!



∴2013/04/14


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