17

「それじゃ……恋歌さん。明日からしばらく学校をお休みしますからみんなに何か一言!」
「…………はい?」

帰りのホームルームでいきなりそんな事を担任の先生に振られたあたし。
無茶ぶりは止めてくれよ。

「あー……取り敢えず生きて帰ってきます。終わり」

特に言う事も無かったので冗談を言って、さっさと終わりにしてやった。
頑張ってね。とか、元気になって帰ってきてね、とか友達の励ましの言葉もそこそこに教室を出ようとした……その時だった。

「「美羽音ー!」」
「おあ、みんな。やほー」

教室のドアを開けた先には見慣れた5人の姿。
ハンド部の二年生全員がそこに立っていた。

「「美羽音、手術頑張ってー!」」
「え…………」

はい!と渡されたのは大きな袋と色紙。
色紙には大きく『頑張れ美羽音!』と書かれていた。

「あははは……マジで?」
「美羽音、泣きそう?」
「んなわけねーだろ(笑)」
「何だよ、つまんない」
「まあまあ!うちら美羽音の為に選んだんだからね!ほら、開けてみて?」

冗談を交わしてたら促されて、開けてみた袋には可愛いゾウの抱き枕が入っていた。

「わ、可愛いー!」
「一番似合うと思って買ってきたの!ゾウさん、なんか美羽音みたいでしょ?」
「うわ、なんかそれ失礼」

あはは!と明るい笑い声が廊下に響く。
その中で一人が取り出した抱き枕に抱き付く。

「やっぱりうちも欲しい〜!」
「おまっ!これ美羽音のだからね!」
「美羽音にあげるの勿体ない〜」

バカか!とツッコミを入れた子が彼女から抱き枕を奪還して、はい!と渡してくれる。

「これで夜の病院も怖くない!」
「……うん、待って。今、冷静に考えてみたんだけど、これを病院に持っていけと?」
「「「うん」」」
「どんだけあたし大荷物なんだよ!!」

病院に持ってかないと意味無いでしょ。と突っ込まれて、ま、頑張って持ってくよ。と返事をした。
あたしはこれで帰りだけど、みんなはこれから部活だから、長々と話す訳にも行かない。
名残惜しいけれど、帰ろっかな。と言ったあたしに1人1人がメッセージをくれる。

「美羽音、大変だと思うけど頑張って!いつでもメールして良いからね!」
「ひとりじゃないから、つらくなったらゾウ見てハンド部を思い出してね?」
「アイツに何言われようと、帰ってくる事!うちらは美羽音の味方だから」
「美羽音が帰ってくるまでずっと待ってるからね!」
「早く帰って来て、また6人揃ってバカやるぞっ(笑)」

一年以上も同じ年月を過ごしたみんなの言葉が優しく胸に染み込んでゆく。
誰よりもあたしを分かってくれてる彼女達のそれは、あたしにとって心強い支えになる。

「みんな……ありがと!」

不安な気持ちなんて全く無くて、あたし達は心からの笑顔で笑いあった。



【17.帰る場所は此処にある】



絶対、戻ってくるからね。



∴2012/02/24

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