09

「……で、美羽音ちゃんは山口先生にはどうするって言ったの?」
「え?あ、スポーツ復帰」
「……長くなりそうだね」
「だけど、頑張るもん」

初回のリハビリはマッサージと筋トレ、そして色々と質問された。
筋トレが終わるまでは小依さんがやってくれていたのだが、質問の所からは大久保くんが担当しているようだ。

「職業は……高校2年生だよね」
「うんー」

質問をされながらあたしもたわいない疑問を彼に聞いていて。
ふと、若いけどリハビリに手慣れた感じがする大久保くんにあたしは尋ねた。

「ねぇ、大久保くんって何歳なの?」
「……逆に何歳に見える?」

質問を質問で返すのはあんま良く無いでしょ、と心の中でツッコミを入れつつ、彼の顔を見つめる。

「にじゅう……よん、かな」
「お、いい所つくね」
「で、何歳なの」
「当たってるよ、その歳で」

へぇ……、と呟いて後ろから出て来た小依さんにも歳いくつですか?と聞けば、20ですよ、と答えが返ってきた。

「……で、美羽音ちゃんは?」
「あたし?16……今年で17だけど」
「若ーい!」
「あたし一応現役女子高生ですからね長月さん」
「……7歳差、か」

書類に書き込みながら呟く彼の声に、自分も7年後こうして働いているのかと思うと何だか不思議な感じだ。

「7年後かー…想像つかないなぁ」
「案外何もしてなかったりして」
「むか、失礼な!」
「はいはい、ごめんね……じゃあ、スポーツ復帰希望で、目標は高校最後の大会出場……それでいい?」

ふざけていたのに急に真剣になった彼にあたしも気が引き締まって、真っ直ぐに彼を見ると頷く。
それを見た彼は優しい笑みを浮かべて言うのだった。

「じゃあ、ひとまずは10月12日の手術に向けてだね」
「………うん」



【09.まだ未来は見えない】



でも、希望があると信じて。
今は前に進むしかない。



∴2012/02/06

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