06 おやすみ
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「ねむい」
「…まだ10時なんだけど」
「ふあ…なんで翼ねむくないのおー?」


ご飯も食べてお風呂も入って、翼と一緒に宿題をしてて終わった途端に眠気がきた。この後は明日の試合のマネージャーを頼まれてるからその内容とかを聞こうと思ってたんだけど、眠いと言ったら翼に呆れたような顔をされてまだ10時なんだけどといわれた。昨日は寝る時間も一緒だったし翼のほうが運動してたから疲れてるはずなのになんで眠くならないのかが不思議だ。


「はあ。明日は7時に起きてついてきてくれればいいから、もう寝なよ」
「…んー…そうする…」


握っていたシャーペンを取られてベッドに連れて行かれた。いっつも思うけど翼って過保護だよなあ…。将来子供とか出来たらすんごい可愛がってそうだ。そうなるとわたしの姪っ子か甥っ子になるのか。翼の子供だったら顔はやっぱ可愛いんだろうなあ、性格は奥さんの方に似ることを祈るよ。そんなくだらないことを考えていると強烈な睡魔が襲ってきてわたしはすぐに眠りについた。



「おやすみ、ゆか」



意識がなくなる前に翼の声が聞こえた。昼間は絶対に聞くことはない、とっても優しい声。







「?」


ゆかが寝てからもなかなか自分は寝ることが出来なくて部屋の電気を消してベッドに入って上に設置してある明かりをつけて本を読んでいた。パラ、と自分が本のページをめくる音しか聞こえなかったのだが、しばらくしてふと違和感を感じた。パタンと読んでいた本を閉じてあたりを見回すと、誰もいない。当たり前だ。ここは自分とゆかの部屋。二人以外に誰もいるはずがない。となると自分ではないと言うことはゆかだ。立ち上がってゆかのベッドに近づいた。


「……ん…」


翼が感じた違和感の正体はやっぱりゆかだった。目は開けていないということは眠っている。眠っているゆかが、うなされていた。額にうっすらと汗をかいている。


「…ゆか」


声をかけると、ゆかはうっすら眼をあけた。しかし意識はまだ眠りについているようで、またすぐに目を閉じようとする。


「ゆか」
「…つば、…さ…?」
「僕だよ。大丈夫だから」
「っ…」


何回か名前を呼んでいると、ゆかが小さく翼の名前を言った。その声はどこか震えていて、涙声だった。大丈夫だよ、と言うとゆかは手を伸ばして翼の首に腕を絡める。そしてぎゅっと腕に力を入れて抱きついた。まるで、翼がちゃんとここにいるか確かめるように。翼も、ゆかの頭の後ろに手を回して抱きしめる。


「また見たの?」
「っ…」
「おいで」


ぎゅっと抱きしめてくるゆかを優しく包み込んだ。




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