05 ジェラート
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「美味しいっ」
「ガキっぽい」
「だって美味しいんだもん。あ、翼の一口ちょうだい」
「…僕まだ一口も食べてないんだけど」
「いいじゃんそんなケチケチしないの。…あーー!」
「ケチケチしないのって言ったのはそっちだからな」


翼がまだ一口も食べてないジェラートをスプーンですくって食べると今度はわたしのジェラートにガブリとかぶりつかれた。何でコイツはわたしの前ではこんなにガキなんだよ!と心の中で文句を言いながらそれでも先にしたのはわたしだったのでその文句を飲み込んだ。ウマイとジェラートに手を伸ばし続ける翼に頬が緩む。もうすっかり機嫌は直ったみたいだ。


「なに笑ってんだよ」
「んー?べっつにー」
「…むかつく」
「ふわっ!?ちょ、お姉さんに向かってそれはないんじゃないのっ?」
「誰がお姉さんだって?」
「わたしの方が産まれるの早かったじゃん」
「ほんの数秒の差だろ」
「でも理屈的には…って、あーー!」


笑ってたのを翼に咎められて。むふふーと笑みを向けていると癇に障ったのか翼がわたしの頬をつねってくる。掴まれた瞬間は油断してて変な声が出ちゃって避けようと思ったけど翼は未だに頬を離してくれない。なんとか普通に喋ることはできるけど。口で負けるのはなんか嫌だったからそのまま言い返していると翼の視線がこっちを向いていないことに気がついた。どこ見てるんだ?と思って視線をめぐらせて見ると翼がわたしのジェラートを食べているのが目に入った。思わず声を上げる。(叫んでばっかだなわたし…)


「うるさい」
「うるさいじゃないっ!それわたしのジェラート!」
「あーはいはい。ほら」
「んむっ…って、これが最後の一口!?」


食べるなー!と言っていると翼の口元に持っていかれていたスプーンを向けられてそれをパクリと食べる。翼のスプーンだけど姉弟だしべつにお互い気にはしないです。よく見るとそれが最後の一口だったらしく、わたしのジェラートは残りのカップだけになった。し、信じられない…!


「翼!」
「あー分かった分かった。もうひとつ買ってやるから」
「ほんと!」
「さっきと同じやつでいい?」
「ううん、違うのがいい」
「ほら。行くよ」
「うんっ」


買ってくれることになって喜んでいると翼に子供だなと笑われてしまった。ちょっとだけムッときたけれど、文句を言ったら買ってくれなくなりそうなので何も言わずに黙って翼についていく。じつは違う味を買えばよかったなーって思ってたからラッキーだ。もしかして翼は分かってたのかな?だからわたしが食べる前に食べてくれたんだったらエスパーだ、翼。これも双子だからって言ったら納得いくとか?とにかく新しく買ってもらえるのでわたしは満足です。


それからは翼が買ってくれたジェラート(一番大きいサイズ)を二人で食べながら帰りました。




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