17 余計なこと言わないで
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「……ん…」
「あ、起きた?」


いつの間に眠らされてたんだろう。頭を打ったのか、ズキズキする頭を抑えながら起きあがると、初めに声をかけてきた男の声がした。振り返ると、タバコを咥えながらこっちを見ていた。ここにいるのは、その人一人。


「…」
「そんなに警戒しなくていいよ。アンタにはなにもしねえから」


わたしが少しずつ距離をとろうとしていることに気がついたのか、男の人はそう言って少し笑った。そして、ふーっとタバコの煙を吐き出してこっちを見る。


「ごめんな、巻き込んで」
「…え…?」
「本当はアンタで楽しませてもらう予定だったんだけどさ、それは止めたから」


楽しませてもらう。その意味が分かった瞬間、さあーっと青ざめたのが分かった。その様子を見て男が「だから止めたって」と笑って見せた。


「本当はこんなことしたくないんだけどさ」
「…」
「あ、信じてねーだろその顔。俺は基本的に女の子には優しいんだぜー」


女の子に優しい人はこんなことしないと思うのだけれど。意外と自分が冷静で驚いたけれど、それでも黙って男の話を聞く。


「もっとチャラそうなのだったら止めねえんだけど、アンタは違うっぽいから…って、やべ」
「…」


この人は意外といい人なのだろうか。ここまで言うつもりじゃなかったと言うように口に手を当てて言葉を止めている。すると目が合って、少し照れたようにぽりぽりと頬をかく。


「あー…今の聞かなかった事にして」
「…もう聞いちゃいました」
「やっべー。俺アイツらに省かれるかな」


省かれるとかあるんだ、結構シビアなんだなあ。…っていうか、本当にこの人はいい人なのかもしれない。今何時くらいなんだろう。というか、どのくらい時間がたったんだろう。


「…恭弥君は、たぶん来ませんよ」
「いや、ちゃんとアンタ攫う前に風紀委員ボコっといたから来るよ」
「…それでも、恭弥君は来ません」
「なんで?」
「…わたし、恭弥君を怒らせちゃいましたから」


だって恭弥君、なんか怒ってたんだもん。なんでわたし、理由が分からないんだろう。恭弥君も気に入らない事があったなら言ってくれればいいのに。…思い出したらだんだんヘコんできた。(ボコられた風紀委員さんごめんなさい)


「それでも来るだろ」
「…来ない、です」


だから来ないと言ってるじゃないか。視界が歪んできて、化粧が落ちないように目元を拭う。すると男の人が近づいてきて、わたしの頭を撫でた。


「好きな女拉致られて、黙ってる男はいねーよ」
「え…――?」

「余計なこと言わないでくれる」


第三者の声がして、振り向くと依然見たことがある鉄の棒を持った恭弥君がいた。なんで、ここに?っていうか今、この人なんて…――




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