お隣さん (復活/雲雀)
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「あはははは!でさー」
「そうそう!あれ本当面白いよね」
「うんうん!…あ。あたしちょっとトイレ行ってくるね」
「気をつけなよー」
「トイレ行くだけでなにに気をつけるのー?」
「や、ゆか転びそうだし」
「こけませんー!」


転ぶなよー!という友人の声をBGMに教室を出る。

私は基本的に敵は作らないタイプ。その人その人によって態度も変わるし、接し方も変わる。でもそれは違和感がない程度のことで、その所為でぶりっ子だとか猫かぶりだとか、そういう部類のことを言われたことはない。俗に言う、世渡り上手な人間なのだ。(自分で言うのもなんだけど)さっきまで一緒にいた子達は、クラスで一番仲がいい子たち。あの子達は、私と同じ考え方なのか知らないけど小さなことにあまりこだわらない。深く突っ込んでこないあの子たちとの関係は、私にとってとても居心地のいい。


「(ふう。はやく戻ろ)」
「君は群れないんだね」
「へ?」


トイレも行って、教室に戻ろうとしていた矢先、私は後ろから聞こえてきた声に振り返る。そこにいたのは、かの有名な風紀委員長の雲雀恭弥。あ。そういえばトイレの直ぐ正面は応接室だったっけか。応接室のドアに背を預けて、腕を組んで私を見ている。


「私、群れてるよ?」


彼の言う“群れる”の意味が私の思っている通りなら私は群れてるうちに入るのだろう。だって私は、いつも同じ子と一緒にいるから。認めるとは思ってなかったのか、雲雀君(って呼んでいいのかな?)は少し驚いたような表情をしたけど、すぐにもとの顔に戻った。


「認めた子なんて初めてだよ」
「そうなの?でもまあ本当のことだし」
「面白いね、君」


やっぱり少し驚いていたようだ。隠してもどうせバレるでしょ?というと、雲雀君は横にしていた身体をまっすぐ私のほうへ向けた。どうやら私は彼にかみ殺されはしないらしい。なにげに気に入られたのか、証拠に『面白い』の言葉。


「いい意味…?」
「いい意味だよ」
「それは良かった」


悪い意味ってどんなの?って聞かれたらなんて答えたらいいかは分からないけど、いい意味なら良かった。雲雀君は結構学校では恐れられている存在で、あまり喋っているところを見たことが無かった。私も周りからの影響でか、雲雀君は怖いもんだとばかり思ってたけど(だって並盛の不良をつぶして回ってるとか聞いたし)意外と表情も豊かだし、優しいところもあるんじゃないでしょうか。


「…ところで」
「?」
「その格好はわざとしてるの?」


その格好?と聞かれて「あ」と思わず声を漏らしてしまった。私、実は制服を着崩しちゃってます。って言っても凄く短いスカートにシャツだし、とかじゃなくて長くも短くもないくらいの(ちょっと短いほうなのかな?)スカートにカッターシャツの第二ボタンまで開けて、ネクタイは緩め。全部じゃないけど、少しシャツは出てる。


「…そっか。雲雀君、風紀委員だから取り締まられるのか」


今直すよと言ってボタンを留めようとしたとき、何故か雲雀君から静止がかかった。え?と思って手を止める。するとなんとまあ、意外な行動。



「今日は見逃してあげるよ」



留めた第二ボタンを雲雀君がパチンと開けた。すぐ近くまで来た雲雀君の顔はそこらの男子より数段綺麗で、ついドキ、としてしまった。それに加えてそのままの距離で不敵な笑みを向けられてしまった暁には、もうドキなんてものじゃない。赤面ものだ。実際、私の顔はありえないくらい真っ赤になっていたことだろう。誤魔化すように教室に戻ろうとした私を、雲雀君は楽しそうに見ていた。


「あ、雲雀君!」
「なに?」


私がいるのは教室のドアの前。雲雀君がいるのは応接室のドアの前。結構な距離があるけど、廊下には私たちのほかに誰もいないので、声は届く。


「気が向いたらでいいから、たまには授業にでない?私の隣、雲雀君なんだよね」


だからなにか話しようよ。隣がいないとなんか寂しいんだよね。と言って私は教室に入った。雲雀君にしては珍しいきょとんとした顔を見れて何故か満足していた私は、その後の雲雀君の意味深な笑みを見ることはなかった。そして私は、教室に入った途端クラスメイトからの視線を一気に浴びたのだ。(みんなは私が雲雀君と話しているのを見て勘違いしたらしい)(傷だらけで帰ってくると思って心配してくれてたんだって。雲雀君はそんなことしないのにね)(あ。でも実際してるのか)


次の日、1限間目から雲雀君が授業に出てきて
クラスメイトともども先生も驚いてたのは最早言うまでもないだろう。



(おはよう、雲雀君)
(おはよう)
(授業出る気になったんだ?)
(ゆかが来いって言ったからね)
(…あれ?雲雀君って私の事名前で呼んでたっけ?)








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