「……は?」
「だーかーら、今日は僕たちゆか専用なんだよ」


ホスト部に来た瞬間、あれよこれよと光と馨にソファに座らされ、言われたことに思わず「は?」と素で聞き返すと一回で聞き取ってよ!と怒られた。いや、なんであたし怒られるんだ?


「今日はね、ゆかちゃんがお客様なんだよお〜」
「へ?」


ハニー先輩の言葉で、さっき光と馨が言ってた意味がやっと分かった。


『ゆか専用なんだよ』


つまりアレか。あたし相手にホスト部をするって…!?


「ややややや、遠慮しときます!」
「何故だ?」
「なんでとかそういうんじゃなくて!ええ遠慮しますって」
「折角俺まで許可したんだ。素直に受け取れ」
「受け取れってあんた、無理だって!」


なんでこういう流れになってるの!?ゆか〜と言いながら光と馨がつつつ、と隣によってくる。二人にピタリとくっつかれ、ゆかは「ひっ」と声を漏らす。


「ゆか」
「や、ちょ、まっ…」


光に手を取られ、馨に顎を持ち上げられる。そしてソファの後ろにはハルヒ、環、鏡夜、そしてモリにハニー。ハルヒが「やっぱり嫌がってますよ、ゆかさん」と助け舟を出してくれるが、環はとことんそれを無視。ノリノリの光と馨も口元に笑みを浮かべている。


「か、馨…近いっ…」
「…キスでもする?」


馨はいつもの冗談で言ったつもりだった。環たちもそのことを分かっているからか何も言わない。そう、ニヒルな笑みを浮かべて言った馨に、



「……――っ!」



ゆかはボンッっと音を立てて一瞬にして真っ赤になった。その反応に環たちも吃驚。
馨なんか釣られて赤くなってしまっている。


「…っちょ、まじで止めて…」
「な、ゆかそんなに照れなくても…」
「て、照れるに決まってるでしょ!ただでさえあんた達顔だけはいいんだから…」
「(…さりげなく酷いこと言ってる、ゆかさん)」


顎に手を添えられたままで動くことが出来ないのでゆかは目線だけ逸らして馨から視線をはずす。今だに顔を真っ赤にしたまま言うゆかに、環が焦って聞くがゆかは馨の手が緩んだ隙に勢いよく環に顔をむけて言う。心の中で突っ込みを入れたのはハルヒだ。



「あ、あのね?あたしはアンタ達と違ってこういうのは全っ然慣れてないの。だからさ、その…あ、あたし相手にそういうのするのは止めよう?た、多分あたし照れまくってパニクるだけだと思うしさ…?」



だからほんっと勘弁してください…。うう、とうなだれて言うゆかにみんなが顔を見合わせる。


「…」


…ただ1人を除いて。馨はひとりみんなとは違う方向を向いて、口元を手で隠していた。


「馨?」
「っな、なんでもない」
「ごめんね、あたしもしかしてどっか叩いた?」
「いや、だ、大丈夫だよ」


(…どうしよう…)
さっきの、ゆかの真っ赤になった顔が頭から離れない。ボンっと勢いよく顔を真っ赤にさせて自分を見るゆかに、不覚ながらもときめいてしまった。


「(…でも、あれ……?)」


普段、ホスト部に来るお客さんたちが自分達を見て顔を真っ赤にしていても、何とも思わない。どうして、こんなことを思ったのだろう?ゆかの表情を見て、ドキッとした。ふと視線をゆかに戻すと、不安そうに自分を見るゆかと目が合った。くい、と制服のわき腹部分が引っ張られる感覚がして、視線をおろすとゆかの手が自分の制服を握っていた。


「…馨」
「なに?」
「ごめん、ね?」


きゅ、と掴んでくるゆかの手に力がこもった。ごめん、と繰り返す。


「…大丈夫だよ」
「ほんと?」
「うん。ビックリしただけ」
「びっくり?」
「ゆかお兄ちゃんのところにおいでー!」
「わあ!ちょ、環離れてっ!」


空気の読めない環に邪魔されてしまった。後ろからぎゅうっと抱きしめてくる環にゆかは慌てて引き離そうとするが力が強くてなかなか離れてくれない。ちょ、お前調子のんな!なんていう言葉までゆかの口から出てきてしまっている。


「まじで離して環…!」
「環先輩、ゆかさん嫌がって…」
「きゃああ変なとこ触るなバカ!って、わっ!?」


その環の腕を、ほどこうと必死になっているゆかの腕をぐいっと引っ張ると綺麗に自分の腕の中に納まった。


「あ、ありがと馨」
「ん」
「ゆかーーーっ!」
「ぎゃ、ちょっと環やめてほんと!」


(…まあ、いっか)
ぎゃあぎゃあと騒ぎながらもしっかりと自分の背にまわされているゆかの手に、先程のことを深く考えるのはやめにした。ぎゅうーっと抱きしめたらゆかが慌てて離れようとしたので離さないようにもっとぎゅっと抱きしめた。





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