「私の誕生日だよ」
「…だから?」
「だからプレゼントちょーだい!」
「は?」



As you like it



意気揚々と俺のアパートを訪ねたアホはのたまった


「去年のあんたの誕生日ん時、祝ってあげたじゃん。なら、お返ししなきゃでしょ?」


笑顔がムカつく

去年、確かにコイツに誕生日を祝われた。ただしアレを祝うと言うならだが。今日みたいに家に押しかけかれ、嫌がらせのような甘いホールケーキ(俺は甘いのが大嫌いだ。コイツも知ってる)と、いくつかの手製おかずを渡された

もちろん俺1人で食べるワケもなく、コイツも一緒に食べた。その時、「今日お父さんが出張でさ、帰ってこないんだよ。あ、お父さんの分のケーキ持って帰るから」と言われた

つまりそういう事。ケーキはコイツが食べたいだけで、夕飯を1人で食べるのが嫌なだけ。その証拠に「あぁそうだ、お誕生日おめでとー」と、取って付けたように言われたし

やっぱ祝ったとは言えない、つーか、言いたくない

俺の渋い顔に気付いたのか、コイツはそれから、と続けた


「それからプレゼントもあげたじゃん」
「…本当はおじさんにあげようとしたヤツだろ」
「あれ、バレた?実はサイズ間違っちゃってさ」


悪気なく白状するから余計に脱力してしまう。苛つくのも突き放すのも無駄に思えた


「てか、お前の誕生日明日だろ」
「あ、覚えてたんだ」
「一週間前から騒がれてりゃな」
「なのにプレゼント用意してないの?」
「無駄な出費はしたくない」
「うっわ、ヒドい!」


そう言うクセに機嫌は良いようだ。顔が笑ってる


「明日は好きな人と過ごすから、今日は一緒にいてあげる」


恩着せがましい。呆れて物も言えない。けれど追い返そうとしても、どうせプレゼントを渡さない限り帰らないんだろう、この物好きは

諦めと共に息を吐き出した


「で?プレゼントって何が欲しいんだよ?」


コイツの事だ、めぼしい物があるんだろう。言ってやれば、よっしゃ、とガッツポーズしやがった

なんだか負けた気分だ。コイツを調子に乗らせないために上限を付けようか


「俺、金ないから高いのは無理だかんな」
「分かってるって。今夏じゃん、だから水着欲しいな!買い物行こう!」
「…そーいうのは彼氏と行けよ」
「まだ好きな人だし。一緒に海行くつもりだから買ってよ、セクシーなやつ」
「お前に色気はないからな」
「そう、だから水着くらいはセクシーにね って、何言わせんの!」


ノリ突っ込みをするくらい元気らしい。ちなみに俺のは断じてボケではなく本音だ。この程度の腹いせは許されるだろう


「で?今から行くんだろ?」
「もち!」


満足そうに笑われて連れ立って出掛けた。仕方ない、コイツの誕生日なんだから


20110714

彼女の誕生日は7月みたいです


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