それは、非日常の全てで

止めどなく繰り返されて

少しずつ現実を侵して、








陸奥に移動して目に入ったのは、赤。人を、建物を、街を、すべてを染め上げる赤い色。そして鼻を刺激する生臭い匂い

「通り過ぎた後か」
「みたいだねー」

眉をひそめて周りを見渡す。街の中心部なんだろうが、崩れ落ちたビルに荒らされた道、見るも無惨な姿になっていて、ここにヤツらがいたことをよく表していた

白い靴が赤い色に染まることも気にしないで進むユワを横目に見ながら、歩道とは呼べない位に荒れた道を歩く

「あっちから気配を感じる」

崩れ落ちたビルの奥、左の方から僅かだけどヤツら‐Ruddy(ラディ)の声が聞こえて足を止めた。少しだけ集中してみれば、やはりいた

「早く行った方が良さそーだね」

ユワも気付いたんだろう、ラディの声と人の叫び声に。互いに一瞬だけ視線を合わせて、一気に走り出した





人類が超能力を特殊なモノとしてではなく、生まれながらに持つ力として使うようになって数世紀が経った(もちろん、力の強弱や得手不得手はあるため、全人類が使っている訳ではない)

それと同時期か、少し後に現れ始めたものがいる。真っ赤な醜い姿をしていて、本能のまま辺りを破壊し、人々を襲い、更に赤黒く染まっていくヤツら、通称『Ruddy』(ラディ)だ

ラディは動物が突然変異してなると言われているが、確かなことは殆どわかっていない。ただひとつ確認されているのは、ラディを倒せるのは特異な力の持ち主だけだということだ





声のする場所に近付くと事態は一目瞭然だった。荒れ狂ったラディに襲われる人々は、必死に逃げ惑うも次々にやられているのが走りながらでも分かった

ざっと見、7体か
これなら2人で充分だな

そう見切りを付けて、息ひとつ崩していないユワを見やる

「左、3体は任せた」
「了解」

ユワは頷き、左側へと向きを変えた。それを見送り、出はった瓦礫の端から踏み込んで高めに飛んだ

かつり、

ワザと足音を立てて降りれば、ラディが一斉にこちらを向いた

こうなれば後は決まっている
ただ、赤になるだけ

何も考えずにラディへ突っ込んだ


「夜叉だ、夜叉様と巫女様が来たぞ!」
「やった! 助かったんだ!」
「救世主だ!」

声がしたけれど、耳を傾けなんかしない

「    !」

声なんか、聴こえない







べちゃ、ぐちゃ り

最後の欠片を踏み潰して消した
これで終わりだ

首を回して辺りを見れば、少し離れたところで真っ赤になったユワがこっちを見ていた

「きぃちゃーん」

ユワは真っ赤のくせにいつものように笑って手を振っていた

見ようによっては殺人現場みたいで不気味だ、なんて思いながら足をユワに向けて踏み出そうとしたら、後ろから声をかけられた

「夜叉様、ありがとうございます!」
「あたな様のおかげで助かりました!」
「夜叉様は私達の救世主です!」

さっきラディに襲われていた人たちだろう。口々にお礼の言葉を言っていた。それは留まることはなく、加速するばかりで

夜叉様!
夜叉様!
夜叉様!

濁流のように押し寄せる人の声は全て俺を讃え賞賛するもの

だけど、違う

俺は誰も助けてなんかいない

むしろ、俺は、

俺、はー





「きーぃちゃん!」

右腕に重みを感じ、いつの間にか俯いていた顔を上げるとユワがしがみついていた

「きぃちゃん、帰ろ?」

俺の正面に周り、ユワは下から覗き込んで笑っていた。それに何故か酷く安堵して

「あぁ、帰ろう」

呟くように言えば、大きく頷かれた。ユワはそのまま体を反転させ、群がる人々に笑いかけて簡単に挨拶をして別れを告げた

何を思ったのかユワは俺の左手を握って歩き出した。引っ張られるように歩くのは情けないけど、もう少しだけこうしていたいと思った


後ろからは未だ聞こえる、声


救世主 夜叉 命の恩人 偉大なる能力者 世界を救うお方 夜叉様 夜叉様 夜叉様 救世主様!

そんなんじゃない

「俺は、救世主なんかじゃない」


俺はただの


人殺しだ






それは、非日常の全てで

止めどなく繰り返されて

少しずつ現実を侵して、


確実に自我を崩していく



20100306
20100418 加筆修正

地名は昔の日本のを参考にしていますが、実際のものとは一切関係ありません。ご了承くださいますようお願い申し上げます



















暗い雰囲気
ぶち壊し注意!

シリアスが好きな方にはリターンバックをお薦めします









どうしようもないギャグですよ?
(むしろギャグですらない…)




「きぃちゃーん」

「ん?」

「さっきからー気になってたんだけどけねー」

「ん」

「そこのー看板に市街地って書いてあるでしょー」

「ん」

「街って町ともー書くよねー?」

「ん」

「じゃぁさー街と町って何が違うのかなー?」

「…さぁ」

「ニュアンスの違いー? それとも明確な違いがあるのー?」

「どうだろ」

「なーんで市町地じゃないんだろー? まぁシチョウチって言いにくいけどねー」

「そうだな」

「なーんでーかなー」

「さぁな」


ツッコミ不在
(この会話が学校帰るまで続きます)

キヅルくんとユワちゃん2人で話すと、両方ともぼっけーなんで突っ込む人がいない。だから永遠に会話が続きます。エンドレスです。終わりが見えません!つまりグダグダ…

本当、どうしようもなくてすみません…



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