シリアス風味



ぐちゃり、
   べちゃ


不快極まりない音と共に赤い物体はきぃちゃんに縋るように崩れ落ちた。周りもきぃちゃんも私も赤い。こうなる事はアレが来た時から分かっていたけど、実際そうなるとやっぱり気持ちの良いものではない

(コレが初めてな訳でも、赤に染まる事が怖い訳でもないけれど)

きぃちゃんは腕を軽く振るい、血と赤い物体を散らした。その姿がとてもキレイでカワイソウ

きぃちゃんはいつも無表情で、笑う事も少ないし泣くなんて滅多にあるもんじゃない(というか、見たのは一度だけだ)

けれど、こういう時、辺り一面もきぃちゃんも赤くなって、そんな周りを赤くさせた物体が事切れる時、きぃちゃんは一瞬だけ泣きそうな顔をする

(きっときぃちゃん自身は気付いてないだろうし、本当に僅かな変化だから私以外分からないんだろうけど)

きぃちゃんは戦う事がキライなんだと思う。いつだって眉間に皺を寄せて難しい顔して仕方ないって思い込んで腕を振り下ろすんだから
本当は、誰かを傷付けたいなんて思ってないんだ。だから一瞬で終わるように瞬く間に赤に染めて。そうしてきぃちゃん自身が傷付いてるんだ、全部を抱え込んで

(そんな人が『夜叉』だなんてやっぱり納得できない、きぃちゃん以上に優しい人なんていないのに)

いつもの無表情に戻ったきぃちゃんは私の格好を見て小さく苦笑った

「ユワ、真っ赤」

きぃちゃんだって赤いのだけれど、真っ黒を纏っているから分かりづらい。逆に私は真っ白だから目立つのだ
いつもの事だから気になどしないけど、きぃちゃんは私のこの姿が好きではないと言う

「気休め」

そう言ってきぃちゃんは黒いコートを私の肩に掛けた。その動作がなんだか謝っているようで

(何に、なんて知ったことじゃないけれど)

「きぃちゃーん」
「ん?」
「なんかーお腹空いたよー」
「は?」
「トマトスープ飲みたーい」
「……この場でよくそんな事言えるな」

きぃちゃんはこれでもか!って位に渋い顔をしている。きぃちゃんってトマト嫌いだったかな?(←違う)

「えーだって真っ赤なの見てたらー思い付かない?」
「付かないし、付いたとしても飲みたくならない」
「えぇー…」考え中
「…(嫌な予感)」
「よし、今日の夕飯はーミートスパゲティだよ!」
「……そう」げっそり


今宵、赤い世界を2人で歩く




2010 02 **


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