傷シリーズ


ぱちん ぱちん ばちぶち!

「! いった! いたーいよー」

「ユワ、何やってんだ」

「ううーきぃちゃーん、爪切ってたんだけどねー間違えてー指も切っちゃったー」血だらー

「!…ユワ、こっち来い」

「なあにー?」

「手当て」

手当てされました

「わぁい、きぃちゃんありがとー」

「ん」

「よーし。もっかいーチャレンジだー」

「待て」

「?」

「……俺がやる」

「きぃちゃんがー?」

「…嫌か?」

「んーん! 嬉しーよ! でも、どうしたのー急にー」

「…いや、…(これ以上怪我されたら困る…)…手、貸せ」

「はーい」

ぱちん ぱちん

「きぃちゃんはー器用ーだね」

「そうか」

「そうだよー」









すぱっ

「…、」

「きぃちゃん?どーかしたの?」

「いや…」

「あー! きぃちゃん、人差し指から血が出てるよー!」

「ん」

「消毒しなきゃー!」

「このくらい大丈夫だ」

「だめー。紙ってーばいきんがいるーって言ってたもん。消毒しよー?」

「……ん」

「あったー、しゅっしゅっとばんそーこ!」完璧!










「ユワっ!!」

怒鳴り声のような、叫び声のような、緊迫した必死な声を聞いたのは初めてだった。きぃちゃんはいつも穏やかに(たまに呆れたように)私の名前を呼ぶから

「き、ぃちゃん…?」

いつだって余裕で堂々としてるきぃちゃんが、圧倒的な力を持って立つきぃちゃんが、私の目の前で倒れた。私を庇って、血を流して、倒れてしまった

「…きぃちゃん!」

黒を赤が侵略する







「きぃちゃんのバカー」

「…」

「バカバカバカバカー」

「…」

「…」

「…」

「きぃちゃん、起きてるんでしょ?」

「…ん」

「全治1ヶ月だってー」

「ん。…ユワ、怪我は?」

「してないよ! きぃちゃんが、きぃちゃんが庇うから!」

「そう、よかった」

「よくない! きぃちゃん、いーっぱい血ぃ出たんだよ? いーっぱい痛いんだよ! 私、怒ってるんだからねー!」

「ん」

「もう! なんでそんなに安心してるのー!」

「ユワが、元気だから」

「っ!…もう、きぃちゃんのバカー!」

「ん」

「バカバカバカバカー!」

「ん」

「………。早く、元気になってねー?」

「ん、分かった」

「きぃちゃん」

「ん?」

「ありがと、きぃちゃん」

「ん」


201107**


不器用で器用な2人


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