「夏って怖い話多いよねぇ。なんでだろ?」

「…知りませんよ」←どうでもいい

「映画もテレビも怪談物やるし」わくわく

「意外と好きなんですね、そういうの」

「うん、怖いけど見たい! みたいなね」

「へー」←心底どうでもいい

「で、ピアノにまつわる怖い話とか、少年知ってる?」

「ピアノにまつわる……」

「(わくわく)」

「……知りませんね」

「えぇ! じゃあ、怖い感じの曲とか!」

「(また曖昧な…)……あ、」

「なんかあるの?」

「いえ、曲は知りませんが、ある話を思い出しました」

「話? どんな?」

「…。この学校って結構古くて歴史だけは無駄にあるじゃないですか」

「うん」

「昔の制服って今と違ったらしいんですね。で、この音楽室が使われてた頃の話なんですけど、夕方になるとピアノが独りでに鳴り響いていたそうです。誰かのイタズラだと思った当時の音楽教師は様子を見に行きました。けれど、中には誰もいません。くまなく探しましたが見つかりませんでした。しかし教師は確かにピアノの音を聞いたんです、空耳だとは思えませんでした。教師はピアノに近付きました。普段と変わったところはない、そう思い、帰ろうとピアノに背を向けた瞬間、激しい不協和音が耳をつんざきました」

「っ…」

「驚いた教師が振り返るとピアノの前に見知らぬ制服を着た少女が座っていました。少女は口を広く開いて笑いました。到底、笑顔に見えない笑顔でした。教師は腰を抜かしました。そして思い出しました、ずっと昔に天才と呼ばれた少女が事故で腕に怪我をし、ピアニストになれない事を苦に自殺した事を。少女は昔の制服を着ていました。教師は見るつもりはなかったのに、少女の腕を見てしまいました。その腕はねじ曲がっていて、とてもピアノが弾けるようには見えませんでした。けれど少女は弾いていました。物悲し曲でした。曲が終わるのと同時に少女は消えました。それからその教師の姿を見た人はいないそうです…」

「……」

「…先輩?」

「え、それ、ここであったの…?」

「そう聞いてますよ」

「……」

「……」

「う、うそー…怖すぎるよ? そんな身近なホラーはいらないよ…」

「あ、」

「なっ 何!?」

「…いえ、別に」

「ちょ、気になるよ? 何?」

「……言っていいんですか?」

「え? それどういう…? まさか?」

「嘘ですよ」

「…? 何が?」

「だから、さっきの話。ぜーんぶ嘘です」

「う、そ…?」

「はい、嘘です」

「……」

「……」

「うそぉおっ!? え、なんでどうして?」

「先輩が怖い話聞きたいみたいだったので作ってみました」

「作った、って…少年が作ったの? 怖すぎだよ! ていうか、作り話って!」

「満足しました?」

「…満足って言うより安心した」

「安心?」

「だってそれが本当だったら、もうこの音楽室に来れなかったもの」

「なら、本当って事にしておけば良かったですね」

「どういう意味かな、少年?」

「大した意味じゃないですよ、先輩?」


音楽室の怪談


「もう、少年ひどい。お詫びに楽しくなる曲を弾いて!」
「(そーくるか…)」
「弾いてくれるよね?」
「………1曲だけですよ」



もう夏が過ぎるとか気にしない。あんま怖い話に思えないけど気にしない、気にしない!

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