Three Gymnopedies
空気の間を流れ音は、澄んでいて穏やかで静かで、少しだけ暗鬱。だけど、聴いていると柔らかな繭に包まれてるようで気持ちが良くて眠ってしまいそう
「寝たら許しませんよ」
ピアノの足元に凭れて微睡んでいたら少年から不機嫌な警告。少年がピアノを弾く時、大抵私に言うセリフ。曰く、演奏中に眠るなんて失礼ですよ、だそうで
確かに弾いてと頼むのはいつだって私で、渋々ながらも音を奏でてくれるのはいつだって少年だ
だけど、だけどね。こんなに綺麗で緩やかで暖かくされると、眠くなるのが人だと思わない?
でもそんな事言ったら、無愛想で意地悪な少年はピアノを弾く手を止めてしまうから、私は重い口を開けて気持ちとは裏腹な言葉を音に乗せる
「大丈夫だよ〜寝ないよ〜」
その言葉に少年は納得したのか呆れたのか(多分後者だ)、私に一瞥だけくれてまたピアノに目線を戻した。響き続けるピアノの音に私は静かに瞼を下ろす
だから知らなかった
そんな私を見て少年が柔らかく笑っていたなんて事、知らなかったの
Three Gymnopedies by Satie
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