「ねぇ、ピアノ弾いて?」


私がこう言うと少年は途端にしかめっ面になって、


「またですか」


って、ため息を吐くように言って、しぶしぶって感じにピアノの前へ行くの。まさに嫌々って言葉がぴったりな動作でね


「で、今日は何を?」


それから仕方ないなって顔で私にリクエストは何かを聞いてくるの
私、クラシックってよく知らないんだよね、だって聴かないし。まぁ聴けば知ってるってのもあるけど、タイトルまでは分からない。だからいつも明るい感じとか、映画で使われてたのとか言ってるんだ

でも今日はちゃぁんとタイトルを覚えてきたからね! この私を見下してる感が否めない後輩をぎゃふんと言わせてやるんだから!


「えっとね、ジュトゥヴーが聴きたいな」


ピアノの近くに行きながら言えば、少年が無言で目を見開いていた

…いくら私が(初めて)タイトルで言ったからって驚き過ぎじゃない? 訝しるように見れば、少年に何故か目線を反らされた


「…ソレ、誰から聞いたんですか」
「え、音楽の水森先生だよ?」


あ、人から聞いたってバレちゃった。まぁこの際なんでもいいか


「(あんの似非教師が…ッ!)」
「ねぇどんな曲なの? 弾いてよー」


ブツブツ言ってる演奏者を無視してちょっと強引に言ってみる。水森先生ってば中途半端にしか教えてくれなくて気になるんだもん


「ハア…分かりましたから。水森センセにはもう聞きに行かないでくださいよ(ロクな事がないんだから)」


あからさまなため息とか何で水森先生にこだわるのかとか聞きたい事はいっぱいだけど、ここで少年の機嫌を損ねる訳にはいかないから私は大人しく定位置に座る

少しすると、透明の音が溢れ始めた

(きみが欲しい だなんて言わせるなんて覚えてろよ、似非教師)




je te veux by Satei


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