03 理不尽な絡み方はやめてくれ


 
「名字さん俺と付き合ってくれへん?」

真っ直ぐ私の顔を見て言ってくれるサッカー部で女子からも中々人気の佐藤くん。こうも真っ直ぐに気持ちを伝えられると素直に嬉しい。

「気持ちは嬉しいんだけど、今誰かと付き合うとか考えてなくて…」
「待って!!」

ごめんなさいと言おうとした瞬間佐藤くんに遮られた。

「ごめんとか言わんといて!俺が勝手に言うただけやし!名字さんはなんも悪くないからさ!」
「じゃあ、ありがとう」

私がそう言うと笑顔で言うと満足したのか佐藤くんは自分のクラスに戻って行った。あんだけ爽やかで性格も良い、そりゃモテるわなと納得していた時に「ほ〜」と気の抜けた声が聞こえる。声の持ち主なんてすぐに分かる。振り返るとそいつは居て面倒くさくてスルーしようとするが、持ち主さんはそんな事させてくれないみたいだ。

「佐藤も見る目ないなー。こんな奴の何処がええんやろか」

何となく爽やかイケメン佐藤くんを悪く言われるのは腹が立つ。

「その言葉あんたのファンの子達に言いたいわー。宮侑なんて良い所あるとしたら顔がまあまあって事くらいちゃう?」

私の言葉に明らかに不機嫌になる宮侑。スルーして歩き出すと何故か横に並んで歩いてくる。なんなんだ、こいつ。

「そんなに化けて男欲しかったんとちゃうんか」
「はあ?そんなんじゃないし」
「まさか、お前まだ俺のこと…」
「それは絶対ない。普通に今は自分磨きとか友達とアホやっとるのが楽しいだけ。」

あっそ。と短い返事をし、それ以降何も言わなくなった。でも相変わらず横に並んで歩いてくる。
この沈黙なんなん…
残念ながら帰る場所は同じなので沈黙のまま教室に戻ると入り口で治くんが中を覗いていた。どうやら宮侑を探していたようだ。

「おい、ツム!5限目英語やから辞書返しにこいって言うたやろ!ってお前何ふてくされてんの」

ふてくされてたんか!こいつ!!
思わず宮侑の方を見ると、ちょっと後退りしてしまった。いや、この顔ふてくされてんの?どう見ても人の1人や2人殺した様な顔してるけど!?
流石双子分かるんか!てか、もしかして顔まあまあ発言気に食わなかったのか?顔に自信ある分怒ってるのか?

…そうだとしても関わるのはめんどくさいな。宮侑は治くんに任せて教室に居る友人達の元へ行こうとすると「おい、ブス」と宮侑と言われた。あからさまに嫌そうな顔をするが関係ない様で、あの顔のまま「土曜日、お前練習試合見にこい」と言って治くんを置いて先に教室へ入っていった。

「…は?」

意味が分からず呆然としていると、治くんがポンと肩に手を置いてきた。何か気持ち悪い笑顔で見てくるんですけど。

「名字さんも大変やなあ」
「は?」

訳も分からず呆然としていると、治くんの手が叩き落とされた。その力が強くて若干私も痛いんですけど。

「…いらん事言うなや。これやろこれ」
「次からはちゃんと自分から返しに来いよ。名字さん頑張ってなあ。ツムめんどくさいから」
「はよ帰れや。お前もボケっとしとらんと教室は入れや」

何もなかったようにサラッと解散する宮兄弟。先程の人殺しみたいな顔が嘘みたいに、いつもの顔に戻った宮侑はクラスメイトと話していた。

「いやだから、はあ!?」

勝手に宮兄弟に絡まれ勝手にキレられた気がする!理不尽な絡み方をされムッとしながら友人達の元へ戻るとニヤニヤしながら見てきた。

「話って告白やったん?」
「誰!?誰からやったん!?」
「…佐藤くん。まあ、お断りしたけど」
「もったいなー!佐藤くんめっちゃ良い子やん!」
「確かにめちゃくちゃ良い人だった!」
「じゃあ何で断ったの?」
「今は自分磨きとか、あんた等と騒いでる方が楽しいし…」

友人2人は、まあ無理に付き合う事ないしねーと言って他の話をし出したが中学からの付き合いの友人は、じぃっとこちらを見ている。何か変な圧を感じる…。

「ふーん」
「何ですかその目」
「べっつにー。あんた最近宮侑と仲良しじゃん。さっきも入り口で何か騒いでたし」
「仲良しじゃないでしょ。一方的に絡んでくるだけ」
「ふーん」

何か言いたげな表情でこちらを見てくる友人。私別に変な事言ってないよね?本当の事だし。そう思いながら次の授業の準備をしていると宮侑と目が合った。何か口パクをしているが無視してやった。明らかに「ブース」と言っているのが分かる。ここで反応したら、あいつと同じレベル。無視が一番だ。

だけどそれが気に食わなかったようで「お前無視すんなやっ!!」と理不尽に言われたが、良いタイミングで教室に入ってきた先生に怒られていた。
笑顔で見てやったら気付いたのか「お前っ!」と言った瞬間、先生に「何がお前や!」と頭を叩かれていた。

ザマアミロ





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