02 これが今の日常


 
高校に入りバイトを始めた。少し憧れていたカフェでのバイト。最初はぎこちなかったがもう3カ月経つ頃には慣れた。最初は引っ込み思案な性格を少しでも変えれたらと始めたバイトだったが、バイト先の人達は良い人ばかりで凄く楽しい。
あの日から必死に自分を磨いた。ダイエットをし、高校に入る頃には友達に「痩せた」と褒められるようになり、服が選ぶのが楽しくなった。スキンケアも頑張り肌も綺麗になってきた頃には、チラホラと声をかけられる事が増えた。

最初は宮侑を見返す為だったけど、自分自身楽しくなってきて宮侑の事なんてどうでも良くなっていた。中学からの付き合いの友達とも高校で出来た友達とも毎日が楽しくて仕方がない。実際私の高校デビューは見事に成功し、逆に宮侑に感謝したいくらいだ。

「お前整形でもしたんか」

前言撤回。優しさの欠片もない、こんな事を言うのはあいつしか居ない。
最近顔のむくみを取るマッサージの効果が出て来たのか少し小さくなってきた気がする。ちょっと気合い入れて校則範囲内の化粧をした。ルンルンで学校に着いたら朝練後の宮侑と下駄箱で遭遇してあの言葉。

「あんたに告白した事が今の私の汚点だわ」
「は?んな事言ったらお前に声かけてしまった俺のが最悪やわ」

悲しい事に宮侑とは同じクラスになった。
本人は最初私の事に気がつかなかった。気が付かない上にあろうことか「名字ちゃんってかわええなあ」なんて数ヶ月前のお前に聞かせてやりたい言葉を言いやがった。
何の冗談かと思っていると「どこの中学やったん?」とか言い出して気が付いた。あ、この人本当に気が付いてないんだ。本当ブスには興味ないんだ。

そう気がつくと、やはりムカつくもんはムカつく。宮侑のお陰でここまで変われたが皮肉たっぷりに「どうも〜ブスの名字ですぅ」と言うと何も分かってない表情の宮侑。キョトンとした顔の彼に続けて「いちいちフった奴の事覚えてないわなあ?あ、ブスは数にすら入らんってか?」と、よく言葉が出るなと自分でも感心した。仮にも好きだった相手にどうなんだとは思うけど。
私の言葉に思い当たる点があったのか、それとも宮侑からしたら印象に残ってたブスだったのか、思い出したみたいでそれからはこの態度。最初の猫被りはどこへ行ったのやら。

「とりあえず英語のノート見してくれ」
「まず挨拶をしろ挨拶を。人としての礼儀がなってない」
「そーゆーお前も挨拶してへんやろが!!!」
「あ、治くんおはよー」
「おはようさん」

ギャーギャー騒いでいる宮侑を無視して片割れの治くんに挨拶をする。なんで同じDNAなのにこうも違うのか不思議でたまらない。

「あいつ騒いでるけどええの?」
「いいでしょ、そのうちファンの子等来てヘラヘラするでしょ」

案の定、他学年の女の子達が宮侑に話しかけている。可愛らしい子達で、宮侑の好きそうなタイプばっかり。

ま、私には関係ないけど。

教室行くわと一言残し、自分の教室に向かう治くんに返事をし自分の教室に入る。

「名字さんおはよっ!」
「名字さんこのお菓子好きって言ってへんかった?良かったら食べて」
「おはよー!あ、これ好きなんだあ!ありがとう」

お菓子を貰いニコニコと自分の席に向かうと、「今日も絶好調ですな、名前」と友人にからかわれる。中学からの付き合いの子が1人と高校からの付き合いの子が2人。このメンバーはなにかと気が合う。

「おかげさまでお菓子ゲット」
「ほんと中学ん時とえらい違いやな」
「え、名前って昔からこんなんじゃないの?」
「性格はねー。まあ、元はよかったからね、この子」
「努力の結果だと言って」
「昔はえらいブスやったのにな」

いつの間にか教室に来ていた宮侑の言葉に眉間にシワがよる。まだ言うか、それ。いや、最初の絡み方がああだったから言えないか。

「あらあら、ファンの子達は良かったのかな?」
「放課後練習見に来るらしいわ、可愛げあるよな誰かさんと違って」
「誰の事か分からんけど、化けの皮剥がれやんようにね」

ニマーと嫌な笑顔で言う宮侑に、ニッコリ満面の笑みで言い返してやった。ギャーギャー騒いでいると「早めに終わらしてよ」と私達に言って芸能人の話をし出した。
何故か最初の目標と少しズレだが、宮侑と何故か口喧嘩する程の関係までなった。別に友達でもない。ただの口喧嘩相手。ただの昔好きだった相手。






×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -