01 プロローグ


 
「俺、ブスは嫌いなんやわ」

中学最後、別に付き合えたらなんて思っていない。気持ちだけでも伝えられたらと勇気を出してバレンタインに好きな相手、宮侑くんに気持ちを伝えたら笑顔で言われた。
あれ?宮くんってこんな事言う人だっけ?笑顔だが目が笑っていない。

「もしかしてその手に持ってるやつ渡す気やったん?生憎喋った事もない、しかもブスからなんてお断りやから」

そう言ってさっさと教室に戻っていく。ショックとかそんな感情より、呆気にとられる。
確かに喋った事はない。遠くから見ていた。他のファンの子達と一緒に試合を見に行ってたりしていた。そんなの宮くんからしたら知らないのは当たり前だし、宮くんからしたら気持ち悪いと思うかもしれない。
見た目もお世辞にも可愛いと言われないのも分かっている。けど、仮にも初対面の相手にあそこまで言うの!?フラれたショックよりも、沸々と怒りがこみ上げてくる。

宮くんが歩いた方向を見ると学年でも有名な美人と有名な子に話しかけられ、さっきの笑顔とは違いちゃんとした笑顔で話している。

「おおきに。これ勿論本命なんやろ?」
「え〜、それはどうやろなあ」

満更でもない顔でそう答える女の子と笑みを浮かべる宮くんに、周りは「美男美女やなあ」やら「ええなあ」という声がチラホラ聞こえる。さっき酷い事を言われた筈なのに、腹が立っている筈なのに笑っている宮くんを見てカッコいいなと思ってしまう自分が居る。

悔しい。
私にもさっきの笑顔じゃなく、あの子に向けた笑顔を見せて欲しい。
進学先もたまたま宮くんと同じ稲荷崎高校。別におっかけという訳ではない。たまたまだ。…宮くんが稲荷崎から推薦が来たって聞いた時は喜んだけど。

このままで終わってたまるか。
馬鹿にされたまま遠くから見ているのはくそくらえだ。見返してやる。





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