10 ときめきメ〇リアル


 
好きと気付いてしまったんなら、ガンガンいくしかないやろ!!
そうと決まれば押しまくる!俺ほどのイケメンに迫られて落ちやん奴はおらん!!
なんて思っとったのに名前はそうじゃないみたや。大抵の女は名前を呼んだら直ぐに寄ってきよった。なのに名前は間抜けな顔をして返事もしやん。イラっとして声をかけると漸く返事をしよった。

今日の俺は名前をデートに誘うと決めていた。
あの後もちょこちょこと名前が居なくてもバイト先に行ってリサーチをしてきた。名前のバイト先の奴に名前好みの飯屋を聞いた。丁度俺のオフと名前のバイトが休みなのも聞いた。後はあのアホを誘うだけ。そんなもん余裕の余裕や。
なのに当の本人は用事がある、サムと行けと言いよった。こいつ…俺がデートに誘っとんの分らんのか…!!!ビシッと言ってときめかせたる!!

「その、なんや」

ジッと名前に見られて何か変な緊張感が出て来た。
なにひよっとんねん!俺!ビシッと言ったれビシッと…!!!

「2人で行かへんか?」

あ、やばい。案外ハズイ。けど言ったった!これで名前もときめいたやろ!
そう思った瞬間断られた。断られるなんて思っていなくて名前のダチの方を見ると目が合った。
そこから急に用事が出来たと言って名前との約束を断った。怒っている名前をよそに俺に親指を立てて「今度イケメン紹介してよ」と交渉成立。後は名前の返事待ち。最初は渋っていた名前も諦めたのか、放課後デートをする事になった。

ご機嫌な俺をキモがってるサム達に何を言われても気分がええ。なんてたって今日、名前と放課後デートや!!デートなんて楽勝やろ!



そんな事思ってたのに緊張でオムライスの味なんて対して分らんかった。けど美味しそうに食べる名前を見てちょっとニヤけとる自分がキモイ。
食べ終わった名前は何か難しい顔をして考え事をしてるようやが、俺はもう少し一緒に居りたい。この辺にクレープ屋があるのも調査済みや。会計もスマートに済ませ、クレープを食べながら歩いとると名前がどっか見とる事に気が付いた。目線の先はただのガラスで何か考えとるようやった。

ワザと名前の顔に自分の顔を近づけてみると避けられた。
ちょっとムッとなったけどカマをかけてみた。「憧れの侑くんちゃうんけ?」と。即答で違うと言いやがった。いつものように言い合う。だがさり気無く名前の身体に触れてみた。頭を鷲掴みするという方法で。

今までやったらさっさと手ぇ繋いでキスしてヤる事ヤってたけど名前相手には出来ん。鷲掴みが精一杯。ちょっと物足りんけど、たまにはこのくらいの距離感もええな。「ほな、明日」と何事もなかったように名前と別れたが、浮かれてスキップしとる所をコンビニ帰りのサムに見られて最後の最後に最悪やった。



次はどうときめかせたろうかと登校すると変な恰好をしている名前が目に入った。こいつ今日雨降っとんのにアホやな。けどなんかごっっっっつ俺の事見てくるやんけ。昨日のデートで俺の魅力に改めてやられたか!ご機嫌な俺の言葉をガン無視する名前に、こっち見ろや!と言うが無視された。こいつ…調子乗りやがって…。
また鷲掴みして無理矢理こっち向かしたる…。そう決めたが、髪を拭く仕草やグロスを塗り直す仕草が何かエロい。今まで胸のでっかい先輩やら相手してたが、ただの仕草が何かエロい。いつもとは違う変な意識をしてしまい話しかける事が出来んかった。


「意識したら喋れへんって何やっとんねん…童貞じゃあらへんのに…」
「ブツブツ何言っとんねん」
「いやな、サム。身体じゃなくて仕草がエロいってフェロモン出てるんとちゃうか、あいつ…」
「きっしょ」
「健全な男子高校生ならエロには弱いもんやろがっ!!」

サムの冷たい目線に風邪ひきそうやわ。部室のロッカーからシューズを取り出した時「てか侑、名字さん大丈夫なの?」と訳分らん事を言われた。別に心当たりもない。

「なにが?別に俺何もしてへんで」
「朝、先輩達に嫌がらせされたらしいよ。侑が原因なんだし、ちゃんとフォローしたら?」

スナの言葉に「はあ?」としか言葉が出やんだ。スナの話を聞き終わる前に足が勝手に動いとった。俺の顔を見ると人が避けるで歩きやすい。お目当ての相手が居りそうな場所を何か所か行くと後ろ姿を見つけた。そいつは俺を見るなり笑顔で駆け寄ってきよった。

「侑から来てくれるなんて珍しいじゃん!!どうしたん?」

やたら俺に絡んでくる先輩。いつものように自分の腕を俺の腕に絡めようとするのを振り払い「おい」といつもとちゃう俺の声に漸く、俺がキレてる事に気が付いたみたいや。

「侑…?どうしたん?」
「どうしたんちゃうやろ。何してくれとんのや」
「な、なにが…?」
「今日の朝、えらい派手な事してくれたみたいやのぉ…。」
「あ、朝??」

最初は分からんかったんかとぼけよったが、俺がキレてる理由に心当たりがあるみたいでどんどん顔が青くなっていのが分かる。

「しょうもない事して気がすんだんか?俺、しょうもない奴嫌いなやねんけど。」
「ちがっ…侑聞いっ…」

俺と目が合った途端黙り出した先輩。周りに居る奴等もビビっとんのか何も言って来やん。涙を溜めて俺を見てくる先輩に吐き気がする。

「次あいつになんかしたら、俺なにするか分からへんで?実際、今の段階で我慢できてる自分を褒めたいぐらいやわあ…」

それ以上何も言って来やん先輩に舌打ちをし、もう1人のお目当ての人物を探しに校内を走った。こんなとこ北さんに見つかったら叱られる。つーか部室散らかして出て来た時点で北さんに叱られるのか確定済みや。そう思うと北さんに怒られる事より怖いもんなんてないな。

まだ帰っとらんといてくれ…!
必死に走り遠くに見えた名前の後ろ姿。何か詫びのもん…。自販機が目に入り、奇跡的に持っていた小銭で飲み物を買う。名前の姿がハッキリ見え深呼吸をし名前を呼んだ。キョトンとしている名前に買ったばかりの飲み物渡す。

「名前、やる」

訳も分からないといった表情で受け取る名前。俺が謝るとビックリしていた。
この後何を言うとか考えてなくて、けどもし次こんな事があったら絶対俺が守りたいと思ったんや…

「スマホ」

俺の言葉にピンと来てない名前にイラっとしつつ連絡先を登録し、部活に戻った。名前に嫌がらせした奴等も腹立つが、名前が大変な思いした時に気が付かん自分にも腹が立つ。苛々しながら部室にドアノブに手をかけた時に気が付いた。

「俺ナチュラルに名前の連絡先を手に入れとる…!!!」

さっきまでの苛々が嘘みたいに無くなって気分がええ!勢いよく部室のドアを開け「最高やー!!」と叫んだ先に北さんが居った。無意識に北さんの前に素早く正座をした。北さんの顔は怖くて見れやん。

「侑、」

変な沈黙の後、北さんから名前を呼ばれ「はい!!」と返事をし、北さんの方を見るとあの目をしとる…。正論パンチを出すときの目。

「慌てて出て行った理由はスナから聞いたわ。理由が理由やで散らかってんのはしゃあないな。はよ準備して部活にきぃや」
「あ、ありがとうございます…?」

生きた心地しやんでその目やめてくれ…。いつも以上に体育館の掃除頑張ってしまった…。北さん恐るべしや…。




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