真夜中太陽
私以外の家族がすっかり寝静まった自宅はひっそりと静まり返っている。
時刻はすでに夜の一時を切っていて、窓から見える月だけが今のところ私にとって唯一の灯りの役目を果たしていた。
普通に考えて、そろそろ寝ないと明日の予定に響きそうな時間帯
だけど目が冴えてしまい、寝れないというのが今の私が面している状況だった
「流石にそろそろ寝ないとまずいでしょ、私…」
何といっても明日は彼氏の佐久間との久しぶりのデート
平日だけではなく休日もサッカーに明け暮れている佐久間から久しぶりにお誘いが来たんだ。
最近学校でしか話す事が出来なかった佐久間と二人きりで、ゆっくりできる機会、前から凄く楽しみにしていてた
そんな日に、寝坊して遅刻なんてしちゃったら…!
早く寝なきゃ、と思って目を閉じて寝る態勢を取る物も、焦るだけでちっとも睡魔なんてやってこない。
寝ろ、寝ろ、と自分に念じてみたりもしたけど全く効果が無いのは一目瞭然で
そうもしてる間にどんどん頭は冴えていき、視界はクリアになっていく
無理矢理寝ようとしてるのがだんだん馬鹿らしくなってきて、私は無造作に寝返りを繰り返した
いつもなら3分あればすぐ寝付けるのに…なんでよりによって今日なのさ!
自分に対して逆ギレをしてた時、突然枕元に置いてあった携帯が大音響の音とカラフルな光を発しながら震え始めた。
この着信音は…
携帯のディスプレイを覗き込むとそこにはやっぱり佐久間、と表示されていた
しかもメールではなく、音声着信
普段はメールばかりだから…少し驚きつつも通話ボタンを押した
「もしもし?」
「もしもし、夜中に悪いな」
「平気、私も起きてたから」
「そうか…あのさ」
「うん?」
「外、見てみろよ」
外…?
早く寝ろ、とか言われる物かと思っていたから拍子抜けしたけど、とりあえず見てみようと思ってカーテンを除けて、窓から外を覗き込む
「よう、寝れないだろうと思ったから会いに来た」
「…え、なんで佐久間」
「言っただろ?お前がデート楽しみにしすぎて寝れないと思ったから、来た」
「…は、」
「それに…なんとなくお前が俺に会いたがってると思ったから」
ばか、こいつはホントに馬鹿だ
いつも私が望んでいる事を見抜いてくれる
今だって、私が寝れないって、寂しいんだって、分かってくれて、会いに来てくれたし
やってる事は無茶苦茶だけど、佐久間はそれだけ私の事を思ってくれているんだって実感した
「とりあえず、今からお前の部屋行く」
「え、ちょっと」
「どうせ寝れないんだろ?お前が安心して寝つけるまで、相手してやるよ、その代わり―――」
俺を退屈させるなよ?
(手にした携帯からはピー、と無機質な音)
(目の前には不適に口を歪める彼)
まじで来いよ佐久間