惚れました



「ほら、名前ちゃん!早く早くっ!バス行っちゃうよ!」

「ちょ、ガブリーニくんっ!進むの早いってば!」


久しぶりに久遠監督が練習の休みをくれた日の事
宿舎内で久しぶりのオフを満喫していた時だった
なんだか下が騒がしいなあ、と思っていた丁度その時だ。
いきなり私の部屋にイタリア代表のガブリーニくんが飛び込んできたんだ。

ガブリーニくんのいきなりの登場に面食らっていた私に向かってガブリーニくんは元気に話し掛けてきた


「こんにちは、名前ちゃん!」

「えっ!あ、うん、こんにちは…?」

「聞いたよ!今日はジャパンも練習オフなんだよね?」

「え?うん、そうだよ?(なんで知ってるんだろう…)」

「だから名前ちゃんをイタリアエリアに連れていってあげたいなあと思ったんだ!」

「イタリアエリア?」


確か…
イタリアエリアには運河やが流れていたりしているんだっけ?
ジェラートなんかも売っていたりしていて、なかなかに賑やかな場所らしい
私が黙って考え事をしていた為かガブリーニくんが少し不安げな様子で話し掛けてくる


「もしかして、今日は都合が悪かった…?」

「え!?いやいや、全然大丈夫だよ!?イタリアエリア、だっけ?」

「うんっ!名前ちゃんはイタリアエリアに来た事、無いよね?だから案内してあげたいなあって思って!…大丈夫かな?」

「う、うん!喜んで!」



思わず反射的に返事をしてしまった私はそのまま引きずられるかのようにジャパン宿舎を後にした。
そして今、イタリアエリア行きのバスに乗っている、訳なのだ
ここまで来てからやっぱり帰ります、なんて言う訳にも行かないし…どうせだから楽しんでしまおう
せっかくガブリーニくんがわざわざ自分のオフを犠牲にしてまで案内してくれると言っているんだから


「名前ちゃん?」

「…へっ?」

「大丈夫?ぼーっとしていたよ?」

「あ、ううん!気にしないで?イタリアエリアの事を考えていたの」

「ふうん?…まあいっか!それでね、それで…」


本当にイタリアの街にそっくりなんだ
あそこの店のパスタがすごく美味しくて…
、とイタリアエリアの魅力について楽しそうに話してくるガブリーニくんを見てると自然と頬が緩んでしまう。
初めて会った時は、一瞬天使が居る、などと思ってしまった。
小柄でふわふわとした綺麗な金髪の彼
きっとさぞかしイタリアでは人気な人だったのだろう。

だからこそ、そんな彼がわざわざ私を誘ってくれた理由がわからなかった。
出会ったのはつい最近だし、話した事も数える程度しかない。
そんな私とガブリーニくんが二人でオフを過ごすなんて、私には想像しようが無かった。

そんな事を考えていた時、額に何かで弾かれたかのような軽い衝撃が走る
驚いて俯かせていた顔を勢いよく上げると結構な近距離にガブリーニくんの膨れっ面があって、思わず顔を仰け反らせてしまう
そんな私の反応にガブリーニくんはくすりと笑ったがまた顔を膨れさせた


「名前ちゃん、また僕の話聞いて無かった!」

「う、ごめん…」

「もしかして、嫌だった…?僕と一緒に居るの」

「そ、そんな事無いよ!ただなんで私なんかを誘ってくれたのかなあって…」

「なんだ、そんな事?そんなの僕が君を案内してあげたかったからだよ!」



若干答えになっていない気もしたけれど、そんな言葉が聞けて嬉しいと素直に感じた。
ガブリーニくんだって、嫌なら最初から私の事なんか誘わない訳だし、これ以上くよくよ考えるのはよそう。


「ありがとね、誘ってくれて!」

「気にしないで!さっきも言ったけど、僕が好きでやってる事だから!」

「今日はお姉さんを、しっかり楽しませてよねっ」



ガブリーニくんを安心させるために、そう語り掛けた。
なのに話し終えるとガブリーニくんは眉間に皺を寄せて不機嫌そうにこちらを見つめてきたから驚きが隠せず思わずオロオロとしてしまう私

言葉を失い、どうするべきかと迷っているとガブリーニくんの方から私に話し掛けてくれた。


「あのね、名前ちゃん」

「は、はい…?」



あまり僕の事、子供扱いしないでほしいな



そんな事をいってきたガブリーニくん。
思わずぽかん、と惚けてしまうが慌てて言葉を探す。


「え、えっ…と、ガブリーニくん?」

「そう、それも」

「えっ?」

「呼び方だよ。なんでガブリーニくん、なの?アンジェロって呼んでくれていいのに」


二連続でガブリーニくんが攻撃をしかけてきた
子供扱いしないで欲しい、と言われたと思ったら次は呼び方について

確かにガブリーニくんの見た目や雰囲気のせいか、どこか私はガブリーニくんを子供扱いしている節があった。
それにいきなり名前呼びはまずいかと思ってガブリーニくん、と呼んでいたのだけれども…


どうやらそれがガブリーニくんを不機嫌にさせてしまったようだ。



「えっと、ガブリーニくん…ご、ごめんね?」

「……僕はアンジェロだよ」

「ア、アンジェロくん…?」

「…まあいっか、次からはそうやって呼んで?」


名前を呼ぶと、君付けは不服だったのか少し眉をひそめたが、さして問題でも無かったのかすぐに笑顔になったため、思わずほっとため息をつく




遠くにイタリアエリアの街並みが見えてきた頃、アンジェロくんが再び口を開いた。


「あのさ」

「うん?」

「やっぱり、好きな子には名前で呼んでほしいとか思わない?」


いきなりの質問に思わず首を傾げてしまう
質問の意味は理解出来ているのだけれども、何故アンジェロくんがそんな質問をしてきたかが分からない



「あのね、よく聞いて欲しいんだ」




これからはちゃんと僕の事、男として見てくれないかなあ。確かに僕は背も小さいし、幼い外見かもしれないけどれっきとした男なんだよ。好きな子…名前と抱き合ったり、キスとかしたいって思ったりもするんだからね?それに今日だってイタリアエリアの観光に誘ったのは誰にも邪魔されずに二人で過ごしたいって思ったからなんだ。つまり君とデートがしたかった。どう?僕だって立派な男でしょ?だからさ、

僕の事、子供扱いしないでよね




惚れました

(男だって意識した)
(その瞬間から恋は始まっている?)



――――――

アンジェロたんの性格が迷子

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