比例する温度



「キルア」


こいつがオレの名前を呼ぶ声がきらいだ。
耳に障る。煩わしい。
ずっとずっと昔からそうだった。


「キルア」


いつも何かある度にキルアキルアって。
オレはお前の保護者かって。
あー、うぜ。
とかなんとか、うっかりこぼしてしまう事も少なくはなくて、でもそんな言葉を聞いてもアイツはオレを見てヘラヘラ笑う。


「キルア」


うるさい。
大体念も使えないくせにいつまでもどこまでもついてきてなんのつもりなんだよ。オレを守る?笑わせんな。お前に守られる程オレは弱くない。
ついてくんな。死にかけても助けてやらねえよ。
そう言ってもアイツは必ず、ついてきた。


「キルア」


オレが居なければすぐさま殺されてしまうであろう所でもアイツは死ななかった。ハンター試験でも、蜘蛛とイザコザがあった時も、あのゲームに挑戦した時も、アイツはいつもオレの隣を必至で歩いていた。
なんでかなんて、なんであいつを助け続けていたのかなんて、そんなの、わかるわけが、ない。


「キルア」


ただのお荷物としか思っていなかったはずなのに。
気づいたらアイツはオレの中で、オレの中で。どんな存在になっていた?
傷つけたくない。傷つけさせない。絶対に。
いつからそんな気持ちになっていた?


「キルア」


何回も言っただろ。
泣いたらいつもより三割増しブスにみえんだよ。きたねえから泣くな。
涙だの鼻水だのでぐちゃぐちゃな顔を袖で拭ってやっても水は留まることを知らずに流れていく。少しずつ冷たくなっていく肌を暖めるように。拭う。拭う。


「キルア」

もういいよ。


うるさい。
もうすぐで。もうすぐであの医者のところにつく。
アイツを抱える腕が、体が、生温い液体に侵食されていく。
それと比例してアイツの体は、体は、どんどん冷気に侵食されて。
まだだ。まだ。


「キルア」


失いたくない。












「ほんとに、すき、だった」





オレだってそうだよ










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