ファースト・ショック




「君も、ポケモントレーナー?」

「…え?」


いきなり、変な人に声を掛けられました。





白と黒を基調とした今時な服。
腕や首を飾る奇妙なアクセサリー。
そして、綺麗な緑色の髪。

見るからに異質な存在だった。


その人は目が合った途端、いきなり私に質問をしてきた。
君もポケモントレーナー?、だなんて…
初対面でそんな事を言われるとは思わなかった私は唖然とする。
しかし彼の目…髪の毛と同じ、透き通った緑の目が私の答えを急かしているように見えた私は、慌てて返答を返した。



「ええと…私、親に止められてて…。ポケモン、持ってないんです。」

「ふぅん?…親の人はなんて?」

「お前みたいな自分の面倒も見れないような奴がトレーナーになるのはまだ早いって…やっぱり珍しいですよね」




そう。私は親にトレーナーになるのを止められているんだ。
反抗しようにも親が言っている事も事実だからどうしようもない。


自己管理が出来ていないから、しょっちゅう風邪を引いたりもする。
身の回りの事も管理出来ていないから、すぐ自分の物を無くす。


そんな私がポケモンを手に入れたらどうなるか…確かに想像するだけで身震いしてしまう。
それにトレーナー云々の前に――――



「私、夢があるんです。」

「夢、かい?」

「はい。だから…トレーナーにはならずに、夢を実現させるために頑張ろうって思ってて…」

「へぇ…」




ポケモンとトレーナーの人が楽しそうに戯れているのを見ているだけで私の方まで幸せになる。
だから今はまだ、眺めているだけで良いと思った。
トレーナーになるのはまだ先で良いと。


夢をちゃんと叶えて、
立派な一人前になって、
それから、それからトレーナーになればいいよね。


その旨を彼に伝えた。
彼はしばらく顎に手を当て、だんまりしていたが、私が言葉を発しようとした瞬間遮るかの様に口を開いた。


「大丈夫。君がおかしいんじゃないよ」

「私が、おかしくない?」

「そう。おかしいのは君じゃない。そこらじゅうに散らばっているトレーナー達さ」

「え…」

「理由も無しにトレーナーになって、あんな小さなボールに閉じ込めるんだ…トモダチ達を。悲しいことさ、それが間違っているという事にも気付かない。それに、ポケモンを道具としか思っていない人も居る…愚かなことだと思わない?…ボクは、ボクはそんな愚かな人間達からポケモンを解放したい。ポケモンを自由にしてあげたいんだ。」



彼は早口でまくし立てた。
会った時から思ってたけど、この人本当に早い。喋るのが。
というか、若干電波混じってる。


だけど、そんな彼に惹かれていく私が居た。
彼をもっと知りたいと素直に思った。


「…えっと、私には貴方が言っている事が正しいのか、間違っているのかは分からないけど…それが貴方の出した答えならそれで良いんじゃないかな?」

「……。」

「だって、この世界には沢山の人が居るんだから。その分沢山答えがあるんじゃないかな?貴方みたいにポケモンを解放させたい人、とかポケモンが居ないとダメな人、とか…違うかな?」



ポケモンバトルをしている人達を見て思う。あの人達は、あのポケモン達は本当に楽しそうに勝負をしていた。
その反面、確かにポケモンに酷く当たる人も居る。道具の様にポケモンをこき使い、ポケモンを傷つけるような人が。


きっと彼はとても優しい人なんだと思う。
ポケモンが好きだから。大好きだからこそ許せないんだ。ポケモンを傷つける人達が
だからポケモンの為に、身を粉にしてポケモンに尽くそうと考えているんだ。

そんな事を考えていたけど、彼が再び口を開いたので彼に目線を向ける。


「ふぅん…君は、面白い子だね」

「は、はあ…」

「こんなおかしな事を言っているボクを、相手にするだなんて…ホント変わってる」



この人なんの躊躇も無しに私の事変人扱いしたよ。
ちょっと。ほんのちょっとだけ眉間に皺がよったのが自分でも分かった。
私は変人じゃない!…と、反論しようとすると、また言葉を遮られた。


「…気に入ったよ」

「……はい?」

「世界の数式に直接影響はない、だけど少なくともボクの中での人間論には影響があった…こんな事もあるものなんだね」



世界の数式?
人間論?
彼は突然訳が分からない事を話し始めた。
私が反応に困っているのを察したのか、彼はまたもや話を振ってきてくれた。



「N」

「…えぬ?」

「N…これがボクの名前」

「N…さん…。」

「それで、君の名前は教えてくれないのかい?」



彼…Nさんからの何回目かの質問。
名前を聞いてどうするの?とか、Nって本名なの?とか、聞きたい事は沢山あったのにその考えとは裏腹に口からは勝手に言葉が出ていく


「ナマエ。それが、私の名前…です」

「ナマエ…キミはナマエって言うんだね」



そう呟いてから、Nさんは空を見ていた綺麗な瞳をこちらへ向ける。
私の目とNさんの目の焦点が合った瞬間…

Nさんは、まるで花が咲くかのような微笑を浮かべた。




「ナマエ…覚えておくよ。じゃあ、またね」



一目惚れも、悪くないよね





(またね、という言葉を信じよてみようか)





いつの時間軸だよ

11/2 up




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