(あ、やっぱり・・・)

新入生も大学に馴染み始めた5月。
入学当初から“柔道部期待の一年”と言われている彼の乱取りを見て私は軽くため息をついた。
休憩のタイミングであまり目立たないように近づき、「秋月ちょっと手伝って!」と体育館から連れ出した。
せっかくの休憩時間なのに文句も言わず荷物を持つ彼は、可愛げがあって好感が持てる。

「いつもの水道のとこっすか?」
「ううん。もういっこ先」
「?」
「いーから持ってくー」

首をかしげながらも私じゃとても一度では持てない荷物を素直に運んでくれた彼に、私は自分で握れる精一杯の大きさのばくだんおにぎりを差し出した。
「はい、ごほうび」
「え・・・?」
意味が分からない、というようにぼんやりしている彼の手におにぎりを握らせる。
「ほらおたべ。仕送り前だかなんだか知らないけど、スポーツするなら食事は抜いちゃダメでしょう」
気付いてたんすか、と顔を赤らめる彼をいいから早く食べなさいとせかす。
マネージャーが個人的に差し入れしているのも問題だし、何よりバレたら冷やかされるに決まってる。

「それで?いつまでピンチなの」
「あー・・・あと3日、ですかね・・・」
「3日間どう乗り切るつもりなの」
「えーっと・・・」
ある程度状況は深刻な筈なのに、彼は困るというより照れている。
(ダメだなぁ・・・何がダメって、可愛いとか思ってる自分がダメだなぁ・・・)
「分かった。明日お昼前にB棟来なさい」
「ハイ・・・?」
「お弁当!作ってあげるって言ってるの!」
「まじっすか!!」
満面の笑みを浮かべる彼に、白旗を上げてしまう日も近いかも知れない。





下心にはまだ早い
「今度何か奢ります!」
「気にしなくてい・・・あ、だったらさ、明日の夜暇??」
「夜ですか?練習終わった後なら・・・」
「どうしても行かなきゃな飲み会があって・・・早めに抜けたいんだけど、ちょっと人通りの少ない所にあるお店でさ」
「はい」
「迎えにきてよ」
「はい!」
「頼りにしてるよ、ボディーガートくん」









*an afterword
運動部、年下ときたら海司くんしかいない!と思い書いたのですが大学の運動部など見た事もないので細かい描写は出来ないわ説明っぽい台詞だわでひどいことに。
マネージャーさんって高校の時ちらりと見た事はありますが実際そこまで存在しないのではないかと思うのは気のせいでしょうか。

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