「そうそう。俺今週の土曜久々に地元のやつらと会う事になってさ!」
「・・・え?その日って私とケーキバイキング行く約束だったよね??」
「え・・・!!」
その時のそらの驚いた顔は、正直ちょっと笑えた。


「ごめん!断る!」
「いーよ行って来なよ。集まれる機会ってなかなかないでしょ?」
「それはそう、だけど・・・」
「じゃあ決まり。この話はもうおしまい!」
(せっかくその為に休みとってたから残念っちゃ残念だけど・・・行かせてあげたいし。問題なのは友達を優先する事じゃなくて私との約束を忘れてた事だよなぁ・・・)
「アキちゃん・・・」
「おしまいって言ったでしょ!私先寝るね!」


――そらと同棲を始めて、もうけっこう経つ。
初めは価値観の違いに戸惑ったりもしたけど、仲良くやってきた方だと思う。
ただの夜勤でも、そらの居ない日は少し淋しいと思うくらい、私にはこの生活が染みついている。
すごく居心地がいいけど――なんだか、ただルームシェアをしているような感覚になるのだ。
元々友達の期間が長かったから、付き合い始めたといっても極端に雰囲気が変わる事もなかったし、同棲を始めたのだって利害の一致から。
決して不仲なワケじゃない。だから倦怠期というのとはちょっと違うかも知れないけれど・・・時々、自分たちが恋人同士なのか分からなくなる。

「アキちゃん・・・もう寝ちゃった??」
起こしたいのか起こしたくないのか分からないくらい小さな声で私を呼ぶそらの声が聞こえたけれど私は返事をしなかった。
その日は、後ろから伸びてきた腕に柔らかく拘束されたまま眠りについた。










そして土曜日。
友達を誘ってバイキングに行ってしまおうかとも思ったけれどそう都合良く私に付き合ってくれる人は見つからなかった。
結局私は一人でどこかに出掛ける気にもならず、申し訳なさそうな顔で出掛けるそらを見送った。
(そらが居ないと・・・つまんない)
二人で居てもあまり甘い雰囲気はない。でも、誰と居る時より楽しい。
(こういうのでも、恋人っていうのかなぁ・・・)
些細な不安は尽きない。でも、ずっと彼と一緒に居たいと思う。
(なんか・・・難しく考える必要、ないのかも)
答えが少し見えた気がした私は、布団でも干そうと立ち上がった。




そらが帰って来たのは、思っていたよりずっと早い時間だった。
「ただいま〜」
「おかえり。・・・二軒目行かなかったの?」
「えー?いや、うん」
「なに、具合でも悪いの?」
「違う違う!・・・これ、」
帰って来てからずっと挙動不審だったそらが目の前に差し出したのはむき出しのぬいぐるみ。
「おみやげ。・・・このキャラクター、アキちゃん好きだったよね?」
(こういう所、好きだなぁ)
私の機嫌を取る為に(そんな必要はなかったのだけど)苦手なクレーンゲームをどれだけやったのだろうと思うと、そんな彼が愛おしいと思う。
私たちは案外、愛し合っているのかも知れない。





錆び付いたシーソー
「アキちゃん・・・もしかして、気に入らなかった?」
「そら。一緒にお風呂入ろっか」
「え!?」
「頭洗ってあげる。好きでしょ?」









*an afterword
そんな彼氏が欲しい!という妄想でした。
機嫌を取る為にクレーンゲームで私の好きなキャラをgetしてきて欲しい。(もちろんオタク的なグッズ。普通に売ってるのを買ってくれるよりなんかいい)
もしくはあごひげを差し出して欲しい。(毛を抜くのが好きなので。毛根萌える。でも毛深いのはダメ)
すみませんちょっとおかしな事を言いました。自覚はあります(`・ω・´)

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