「後藤さん、もしかして・・・」

――微かに笑いを含んだ彼女の声が、鼓膜を心地良く刺激する。
「猫舌、なんですか?」
「・・・誰にも言うんじゃないぞ」
「えー。どうしようかなぁ・・・」
「アキ」
「冗談ですよ!怖い顔しないで下さい!」
「・・・はぁ」
「二人だけの秘密、ですね」
「是非ともそうしてくれ」

――偶然に偶然が重なってアキと食事をする事になったあの日を今でも夢に見る。
「念の為弱味になる写真でも撮らせてもらうか」
「え??」
「食べこぼし。総理のご令嬢が間抜けな面になってるぞ」
「え、うそ!」
慌てて口元を押さえ顔を赤くする彼女を愛おしいと思った。
――手を伸ばし、口元をぬぐってやれたらと。
「そっちじゃない、逆だ」
「恥ずかしい・・・写真、撮ってないですよね?」
「残念だが今はカメラは仕込んでない」
「仕込んで!?る時もあるんですか!?」
「アンタがそう思うんならそうなんじゃないか」
「・・・後藤さんもイジワルなんですね」

――あの時素直に彼女の名前を呼んで、機嫌をとるように頭を撫でていたら。何か変わっただろうか。
「一柳の家に送った方がいいか?」
「か、からかわないでください!」
――“も”に誰が含まれているのか、嫌という程分かっていた俺にそうする事は出来なかった。

――なのに、その先を夢に見る。
「誠二さん」
夢の中の彼女は、呼ぶ筈の無い呼び名で俺を呼び、俺に向ける筈のない笑顔を向ける。
(ずっと・・・ずっと、欲しいと思っていた)
――決して触れる事のない彼女の肌に、夢だと分かっていてなお手を伸ばす俺は馬鹿だろうか。
「アキ・・・」





「メッセージカードお付けしますか?」
「あ、いや・・・」
花屋の店員の声に我に返った。
差し出されたカードには“happy wedding”の文字。
(石神さんは出席してもいいと言ったけれど・・・正直、まだ平静で居られる自信はない。こんな時ばかり、公安である事を有り難く思うな)
――けれど。
「・・・カード、もらえますか」

好きだと思った、その笑顔が曇る事のないように。それだけを願っている。





サンザシのブーケ
俺の気持ちは届かなくていい
ただ、“幸せに”――









*an afterword
50000hitでいただきましたリクエスト、後藤さんの片思い、でした。
片思いといえばコレ!と思ったのですがどうでしたでしょうか・・・ひねりがなくてすみません(´・ω・`)
お花に詳しくないのでサンザシを花束に入れていいのか分からないのですが(画像を見る限りフラワーアレンジメント?に使われる事の方が多いように感じました)花言葉(“希望”“ただ一つの恋”“成功を待つ”だそうです)と響きだけでタイトルを決めてしまったので深く考えないでいただけると助かります。
言い訳ばかり長くなってしまいましたが・・・どうかこれからもthink of xxをよろしくお願いします!

back

home

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -