(今日の夕ご飯何かな〜)
彼女がご飯を作って家で待っている。
そう思えばどんな長時間労働の後だって足取りは軽い。


「そらさん、この後・・・いや、なんでもないっす」
俺をメシに誘おうとしたらしい海司が俺の顔を見て口をつぐむ。
「ごめんねー海司。愛しのアキちゃんが待ってるからさ〜」
「顔見れば分かりますから。わざわざ言わなくていいですから」
心底うんざり、という海司の顔に少しむっとする。
「なんだよ。聞いてくれたっていいじゃんか」
「いつもいつも聞いてるじゃないっすか。勘弁してくださいよ」
「俺はぜんっぜん言い足りない!でもまぁいいや、お先〜」
海司のため息を背中に聞きながら扉を閉める。
彼女の話もしたいが生身の彼女の方が大事に決まっている。










(あれ・・・?)
自分の部屋を見上げると明かりがついていなかった。
(アキちゃん今日来るって言ってたよな・・・?)
何かあったのかと慌てて携帯を確かめるも何の履歴もない。
少し早足で階段を登り、自分の部屋の扉を開けると彼女の靴があって、俺はますます不安になった。
(驚かせようとしてくれてるなら嬉しいけど・・・)
でも彼女はあまりそういう事はしない。
俺は慌てて靴を脱いで部屋に入った。


ソファーで丸まる小さな体。
とりあえず彼女が無事らしい事にほっとしながら俺は静かに彼女に近づいた。
(あぁ、無理、させちゃったなぁ・・・)
眠る彼女の目の下にうっすらと隈があるのを見つけて、胸が苦しくなる。
(気付かなかったワケじゃない、でも・・・)
彼女がおかえりと言ってくれるのが嬉しくて。
彼女が作ってくれたご飯を美味しいと言って食べると嬉しそうに頬をゆるめる彼女が愛しくて。
――甘えていた。

(アキちゃんだって忙しいって分かってたのに、都合の悪い事は棚に上げて・・・無理させて、ごめん)
ソファーのそばに座り込んで彼女の髪を撫でていると、しばらくして彼女が目を覚ました。
「・・・え、そらさん?ごめんなさい、私寝て・・・すぐ、ご飯作りますから!!」
慌てて起き上がろうとする彼女の肩をそっとおさえる。
「いいの。いいから。アキちゃんは寝てて?」
「でも・・・!」
泣きそうな顔をする彼女に俺の方が泣きそうになる。
彼女にこんな顔をさせているのは、間違いなく、俺だ。

「ごめんね。授業にサークルに課題に・・・その上家事までさせて、大変に決まってるよね」
「そんな!全部私がやりたくてやっている事です!」
「うん、それは・・・分かってる。でも、ごめん」
「謝らないでください!・・・少しでも一緒に居たくて。これは、私のワガママなんです・・・」
だからやめさせないで、と彼女の目が涙を溜めて訴える。
「それは・・・俺も一緒だよ。だから、今日は俺が作るね!」
「・・・え??」
「焼きそばくらいしか作れないけど・・・でも、焼きそばは自信あるよ!!」
俺がにっこり笑ってそう言ったが、彼女はまだどこが不安そうな顔をしている。
「俺だってもっとアキちゃんと一緒に居たい。でも俺の仕事だってアキちゃんの学校だって大切でしょ。アキちゃんばっかりが無理する必要なんてないんだよ」
「そらさん・・・」
「俺だって頑張りたい。アキちゃんに笑って欲しい。だから・・・一緒に頑張って、二人の時間をつくろう?」





幸せを料理する
俺の作った焼きそばを
豪快ですね、なんて言いながら美味しそうに食べてくれる彼女の笑顔を
絶対に守ろうと心に誓った









*an afterword
なかなかいいんじゃないの?と自画自賛しそうになりましたがこれ逆バージョンみたいなの書いた事あるじゃんと撃沈。
私の妄想力なんて・・・所詮こんなもんです・・・。

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