「透くん、うざい」
彼女のその一言に、俺は固まった。

「透くんウチの両親よりうるさい。ウチ門限ないのに、なんでいつも12時前に帰されなくちゃいけないの?透くんの帰る電車がなくなっちゃうから?送ってくれなくていいって言ってるじゃん!私まだみんなと飲んでたかった!!」
ほろ酔いの赤い顔で、上目づかいで、威嚇するように小さい背を精一杯伸ばして、彼女はそう言った。
(かわいいなぁ・・・)
彼女のお願いはなんでも聞いてあげたいが、これに関しては譲れないと我に返る。
「だーめ!あと、飲み会とか立ったり座ったりする機会が多い時は短いスカートはかないでって言ったよね?」
「レギンスはいてるんだからいいじゃん。パンツ見せてるわけじゃないんだから」
「よくない!男の想像力なめんなよ!」
「何そのドヤ顔、キモイ!秋月くんは絶対そんな事考えてないし!」
「秋月なんてムッツリだし!」
「キモウザの透くんよりマシだし!もう、ここでいい!!」
(お酒も入ってるし、今日はもう何を言っても聞いてもらえなさそうだな・・・)
走り去ってしまった彼女を見失わない程度の距離で追いかけ、無事に家の中に入ったのを見届けてから俺は帰路についた。




(やりすぎ、なのかなぁ・・・)
翌日になれば戻るだろうと思っていた彼女の機嫌は、次の日になっても、その次の日になっても戻らなかった。
(でも夜道をひとりで歩かせられないし、せっかく彼氏っていう肩書きがあるんだから堂々と傍に居たい・・・)
目を合わせようとしても露骨に反らされてしまい話も出来ないという今の状況は正直ツライ。
ゼミの仲間はいいネタだと言わんばかりにからかってくるし、ここぞとばかりにアキちゃんに近づこうとする輩が居ないとも限らない。
彼女は自分に無関心過ぎるから心配になるのだ。
(今日もかわいい・・・あ、唐揚げ定食にしたんだ、アキちゃんあれ好きだよなぁ。あぁ、一緒に食べたいなぁ・・・)
学食に現れた彼女を泣く泣く遠くから見つめる。彼女の隣にはちゃっかり秋月が座っていた。
(いくらかぶる講義が多いからって仲良すぎだよな、あの二人。秋月がアキちゃんの嫌がるような事をするとは思ってないけど、妬かない方が難しいって・・・)
しかし問題なのは秋月ではない。さっきからちらちらとアキちゃんを見て何かを話している連中の方だ。
彼女を視線から守るように秋月が少し椅子を引いて座る位置を変えた。
(──あぁ、あそこには、俺が居たいのに)
見ているのが辛くて、テーブルに突っ伏すと、不意にアキちゃんをじろじろと見ていた連中の声が聞こえてきた。

「森山さん、黒澤と別れたらしいじゃん」
(別れてないっての!)
「いつも黒澤と居るから声かけるタイミングがないんだよな。チャンスじゃねぇ?」
(チャンスなんてやんねーよ!)
「お前帰って部屋片づけて来いよ。森山さん連れてくから、宅飲みしようぜ」
(ちょ、いきなり家連れ込むとか、何考えて・・・!!)

「レポートも出さずこんな所で昼寝とは余裕だな?」
奴らを止めるべく顔を上げようとしたら、その前にゼミの助教授に頭を押さえつけられた。
「イタタ。ちょ、一柳先生今俺それ所じゃ・・・!」
「なんだって?留年させてやろうか?」










(ヤバいこんなに時間かかるとは・・・)
なんとか一柳先生から解放された頃には、もう辺りは暗くなってしまっていた。
(アキちゃんの講義はもう終わってるハズ・・・誰かと一緒に帰ってるといいけど・・・)
電話をかけるが呼び出し音が聞こえるだけ。
(あーもう、早く仲直りしたい!!)
駅にまっすぐ向かわずにウチの学生がよく利用するコンビニの方へ行ってみると、道路の向かい側に恐れていた光景があった。

「いいじゃんちょっとだけ!小竹さんも来てるから!」
「ウソだ今日みどりバイトだもん」
「バイト終わったら来るって!」
「・・・」
「いいじゃん一緒に飲もうよ。黒澤と別れて寂しいでしょ?」
「──はぁ?別れてないし!」
「最近一緒に居ないじゃん」
「それは・・・」
「やっぱり。ほら、行こ」
男が彼女の腕をつかんだ所でようやく信号が変わり俺は走り出した。
(アイツアキちゃんに触りやがって・・・許さん!!)
「やだ、離してよ!」
「大きな声出すなよ」
「やだ!透くん!!!」

「はーい透くん登場〜」
俺の名前を呼んでくれた彼女を後ろから抱きしめながら、その腕をつかむ野郎の手を少々強引に外す。
「イッテ!お前、黒澤・・・!!」
自由になった手で俺の服をきゅっと握る彼女は俺の心臓をも鷲づかみにした。
「透くんと別れるとか、絶対ないから!透くんより格好いい人なんて居るわけないし!!」
毅然とした態度でそう言いながらも、彼女の体は小さくふるえていて、俺は彼女を抱きしめる腕の力を強くした。
(あーもう!なんでこんなにかわいいの!)
「そんなワケだから、さっさと退散してくれる?」
「お前らまじ何なんだよ!?」
『カレカノだけど?』
「ハモるな!もう勝手にやってろ!!」





不可侵領域
「帰ろっか」
「やだ」
「じゃあ、ご飯食べに行く?」
「やだ。透くんち行く。今日は帰らないし!!」
(デレ頂きましたー!!って嬉しいけど俺これどうすればいいの!?)









*an afterword
奇跡の1位感謝祭!でいただきましたリクエスト、恋人設定、喧嘩からの甘々!でした。
本家の二人は喧嘩するイメージがなかったのでパロにしてみました。
喧嘩からの・・・というか、最初っから甘ったるいですね・・・しかし最後は何か足りないですよね・・・だってこれただのバカップル!!
思いっきり甘くしてみたかったのですが、導入を間違えたのかそこにたどり着けませんでした・・・申し訳ないです(o_ _)o
まだまだ未熟者ですが、どうかこれからもthink of xxをよろしくお願いします!!

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