彼女と過ごすようになってついた、癖。
歩く時は手を繋ぐこと。
話にオチが見つからなくても最後まで話を聞くこと。
爪の色が変わった時は口に出して褒めること。
彼女の皿の中のオリーブを食べること。

最初は歩くスピードが分からなくて彼女を置いていきそうになってしまったり、彼女のちょっとした変化に気付かなくて拗ねさせてしまったり、正直付き合うというのは結構大変なものだと思った。
しかし時間が経つにつれそれが自然な事になって、そんな俺の行動に彼女が嬉しそうに笑うようになって。
友達にはお前がそんな事するなんてと笑われたが、悪くない、と思った。
疲れている時に延々と愚痴を聞かされて少しイライラしたり。
悩んでいる時に彼女の間抜けな失敗を見て自分の悩みがバカバカしくなったり。
彼女がそこに居ると、なんでもない事が不思議と記憶に残る出来事になる。
彼女と過ごす時間はどれも大切な時間だけれど、いつかそれが当たり前になればいい、と思った。
十年前の記憶にも彼女が居て、十年後の未来にも彼女が居る。
そんな人生が欲しいと思った。



今日は車を出して彼女の買い物に付き合い、彼女が行きたいと言っていたカフェに行った。
その後遠回りをして海岸線を走り、二人でよく来る、イタリアンで夕食をとる。

「ねぇ、今日って誕生日でも記念日でもないよね?」
今日一日ずっと笑顔だった彼女が、お気に入りのカクテルサラダを頬張りながら首を傾げる。
「楽しくなかったか?」
答えを知っていながら、俺はからかうようにそう言った。
「楽しかったに決まってるよ!でもなんか・・・なんでもない日にこんないい思いしちゃって、バチが当たりそうって言うか・・・」
「いつもは楽しくないって?」
「だから違うってば!もー、海司のイジワル!」
子供のように頬を膨らます彼女が愛おしい。
もう少し彼女をからかっていたかったが、今日の目的はそれじゃないと居住まいを正す。
二流ドラマのようで気恥ずかしかったが、今日ずっとお守りのようにポケットに入れていた指輪のケースを取り出しテーブルの上に置く。

「これから何回でも、こんな休日を過ごさせてやる。だから・・・」
───彼女の目が、段々と見開かれていく。
「俺と結婚してください」

「か、海司・・・」
こぼれそうな涙を受け止める為に、彼女の頬に手を伸ばした。
しかし頬に触れる前に彼女の両手に掴まれ、その優しい温もりに心臓が小さく跳ねる。
「どうした?」
「だって、こ・・・いきなり・・・」
「いきなりじゃない。俺はずっと──ガキの頃からずっと、そう思ってた」
「海司・・・」
「嫌か?」
「そんなわけない!」
「じゃあ、返事、早く聞かせてくれよ」





君色に、染まる
お前がそれで笑ってくれるなら
らしくない事でも、何でもしてやるよ









*an afterword
私の理想、そのものであります(`・ω・´)
しかし心情描写ばかりで、動きや景色の描写が少ないと思った、今日この頃。
このお話は個人的にはかなり気に入っているのですが・・・それにしてもウチの海司くんはすぐにプロポーズしたがりますね。
幸せ=結婚とか、いい意味で単純な思考のような気がするので・・・でもそういう人って、一緒に居るとほっとしますよね。
名前変換なくてすみません!

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