(どうして、こうなっちゃうの・・・)
何をしても裏目に出る自分に、嫌気がさしてくる。

私はいつも奢ってもらうのが申し訳なくて、今日は自分が奢ろうと意気込んでいた。
でもいつも行くようなお店は流石に無理だから、安くてお洒落で美味しいお店を必死で探して、桂木さんを連れてきた。
(なのに。口コミでは結構評判良かったのに。やっぱり下見に来るべきだったのかな・・・)
まず予約をしたのに入ってなくて。(席が空いてたから入れてもらえたけど)
席に座って30分。
コールボタンを押しては待つをくり返し、ようやく注文は取りにきてくれたけどまだその飲み物は届いてなくて、手元には最初から水分の足りない紙おしぼりと小さなお通しだけ。
(・・・しかも!お箸がないって!どういうこと!?)
私はもう泣きたくて、生まれて初めて早くお酒が飲みたい、と思った。


「お待たせしました〜」
緊張感に欠ける様子でやってきた店員さんのお盆を見て私はぎょっとした。
来る途中でどこかにぶつかったのだろうか。お盆にはビールがこぼれており、当然他のグラスやお皿もビールで濡れていた。
しかし店員さんは平然とそのままビールをテーブルに置いた。
(し、信じられない・・・)
私が言葉を失っていると、桂木さんがゆっくりと口を開いた。

「悪いけど、おしぼりとお箸をもらえるかな」
「何個ですか?」
「2つずつ、かな」

桂木さんは3つずつ届いたおしぼりとお箸(ここまでくるとわざとなんじゃないかと思ってしまう)にありがとうと言い、テーブルを綺麗に拭くと控えめにグラスを合わせてくれた。
そしてまだ来てからそんなに時間は経っていない筈なのに冷たい焼き鳥を頬張って、うん、うまい、と桂木さんは笑った。

「本当に、すみません・・・こんな所に連れてきて」
「アキが謝る事ないだろう」
「でも、連れてきたのは私だし・・・」
「まぁ、一晩みっちりと石神の説教でも聞かせた方がいいんじゃないかとは思うがな」
「それは・・・効きそうですね・・・」
石神さんの前に正座をしている彼らを想像して思わず口元がゆるむ。
そんな私を見て、桂木さんは安心したように息をはいた。
「彼らの将来の為に行動を正すのも大切な事かもしれないが・・・せっかくアキと居るんだ、そんな事をしたら時間が勿体ないだろう?」

桂木さんはそれからも楽しそうに飲み、美味しそうに食べ、たくさん話をしてくれた。
今日の目的であるお会計がいつの間にか済んでいて私が困っていると、桂木さんは子供のように無邪気に笑った。
「いいじゃないか。好きな子にお金を使う事くらい許してくれ」
(私だって、桂木さんに何かしてあげたいのに・・・)
だけどずるくて優しい私の恋人は、私の頭をなでて幸せそうにするから、私は不機嫌な顔で居る事すら難しくなってしまう。





たちめかがりまで美しく
どこまでも綺麗な貴方の
大切な時間になりたい









*an afterword
多少盛ってはいますけど、それはそれは酷い居酒屋がありまして。
私手2つしかないのに3つジョッキ乗せられそうになったり(取手は店員さんが持った状態で)、すれ違う時店員さんとぶつかりそうになった友人は「ごめん!」って言われたそうです・・・(もう笑うしかない!)
店員さんの態度が失礼だった時、怒る人と怒らない人、どちらがいいですか?
私は怒らない人が好きなんですけど・・・ここまで酷いとちょっと言って欲しい気も・・・。

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