私の統計上、女の子の末っ子は家で自分の事を名前で呼んでいる事が多い。
私に兄弟は居ないけれど、海司の近所に住んでいた頃も引っ越してからも少し年上の子に遊んでもらう事が多かったせいか、私はよく人から「末っ子っぽい」と言われる。
そしてその見解は、とても正しい。



「アキ、眠いならお風呂は明日でいいから。歯だけ磨いて寝たらどうだ?」
まるでお父さん・・・というよりお母さんな事を言う桂木さんは、ソファーに座っている私の後ろに立って起こすどころか寝かしつけるように頭をなでている。
今日私は桂木さんと桂木さんの学生時代の友人だという男の人と、その奥さんと4人で食事をした。
当然私は一番年下で。でも桂木さんの隣が似合うように大人のフリをした。
―――実際子供の私は、失敗しないようにするだけで精一杯だったけれど。
「・・・まだ、」
(眠るなんて、もったいない・・・せっかく、桂木さんと一緒に居るのに)
しかし私の体からは、力が抜けていくばかりだ。

「今日は初対面の人と食事したから、疲れただろう?」
桂木さんは荷物を片付けながら私の正面に移動して、また私の頭をなでる。
「そんなこと、ありません・・・」
「ありがとうな。嬉しかったよ」
(嬉しかった?桂木さんが??)
頑張って重いまぶたを開けると、目の前の桂木さんは本当に嬉しそうな顔をしていた。
「うん、アキを自慢出来て嬉しかった」

(あれで?自慢できるような事は何一つできなかったのに?)
桂木さんにかかると、私はまるで別人のとっても素敵な人になってしまう。
実際の私は料理のとりわけもロクに出来ず、進められたモノをぱくぱく食べるばかりだった。
(確かに可愛い可愛いって褒めてくれたけど・・・)
後半は桂木さんまで一緒になって私を褒めてくれていた。
でも、それは、彼女を自慢すると言うより・・・。
(親バカ、って感じだったんだよね)

「・・・」
何か不満を言いたい。
もしくはその間違いを正したい。
だけど頭をなでてくれる桂木さんの手が心地良くて、体も思考も、スライムみたいにどろどろになっていく。
ついにぱたりと横になってしまった私に桂木さんがもう一度声をかける。
「ほら、アキ。せめて着替えて」
「ん〜〜、アキ、まだ寝ない・・・」

私をのぞき込む桂木さんが固まったのが分かった。
それに反応するように私はぴくりと動き、下を向いたまま目を見開いた。
(しまった・・・!!!)
羞恥心から私の顔は一気に熱くなり、全身から冷や汗が吹き出した。
―――昔から“末っ子”扱いされていた私は、完全に気が抜けると自分を名前で呼んでしまうのだ。
(でも、最近はおばあちゃんの前ですら言ってなかったのに!!!)
どうしようどうしようどうしよう。頭の中はその言葉で一杯だった。
(どうしよう、ただでさえ子供っぽいのに。これじゃ完全に子供だよ・・・)

私が眠いフリを続けていると、桂木さんがしゃがんで少し強引に私を抱き寄せた。
そして私にまわした手でまた、頭をなでてくれる。
本当に、愛おしそうに。

「・・・ごめんなさい」
なんだか色々耐えられなくなってそう小さく謝ると、桂木さんは少し慌てたように体を離して私の顔をのぞき込んだ。
私は別に泣いてはいなかったけれど、顔は真っ赤だったと思う。
そんな私を見て桂木さんは・・・笑った。
「アキはみんなに可愛がられていたんだな」
「・・・いつも、チビチビって言われてました」
「年上の子に遊んでもらう事が多かったのか?」
「そうですね、必死に追いかけてました」
(でも、そんなの、いいわけにならないよ)
「ごめんなさい」
(桂木さんに、ふさわしい女の子じゃなくて)
私がもう一度謝ると、桂木さんは自分が特別な女の子みたいに感じられるやり方で、頭をなでてくれた。





素顔に関する考察
それだけ俺に甘えてくれてるって事だろ、と
そう言った桂木さんはとてもセクシーだった









*an afterword
思いつきは良かったような気がするのですが・・・書いてみたらイマイチでした。
残念!

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