彼女とシーズンオフ
みうの自宅にて。
明日からツアーで各地を回る為、荷造りをしに彼女の自宅へやってきた。
手伝わなくていいと全力で拒否されたので仕方なくソファーに座り荷造りをする彼女の背中を見ていると、小さく息を飲む音がした後、彼女の背中が動かなくなった。
「・・・みう?どうしたの?」
彼女に近づき手元をのぞき込むと、一枚のワンピースが握られていた。
夏にぴったりの明るい色合いのワンピース。
しかし季節はもう秋にさしかかっている。
「初めて見るワンピースだ。可愛いね」
「・・・買ったの、忘れてた」
なんて事ないように彼女は言い、ワンピースを床に落としたが、その表情は悲しそうだ。
(今年の夏はフェスにも結構出たし、忙しかったもんなぁ・・・)
俺はワンピースを手に取ると丁寧にたたんで彼女のスーツケースに入れた。
「・・・なにしてるの?」
「このワンピースも持って行こう。できれば水着もお願いしたいな」
「櫂、意味わかんない」
「東京公演の前に少し休み挟むでしょ。寄り道してから帰って来ようよ」
「どこに?」
「どこがいいかなー。笑っちゃうくらい暑い所にしようか」
「・・・」
「ライブも楽しかったけど、夏らしい事し損ねちゃったじゃん?」
「もう暑いのはいいよ」
「じゃあ昼間はホテルのプールで涼んでよう」
「・・・」
「夜になって、少し涼しくなったら出掛けよう」
「・・・かき氷」
「うん」
「花火」
「うん」
「すいか割り」
「え・・・もしかして、みんなで行くつもり?」
「・・・」
「いや、みうがそうしたいなら・・・」
「・・・うそ。」
そう言って子供っぽく笑う彼女のあまりの可愛さに感動する。
彼女となら、楽しい思い出が出来るに違いない。
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