age:8


母が亡くなったのは小学2年生の時だった。
母にもう会えないという事は理解していたけれど、家に帰った瞬間どうしても母が出迎えてくれる気がして。
もちろん実際にそんな事はなく、祖母の事は大好きなのにどこかがっかりしてしまって、そしてそんな私に優しく微笑んでくれる祖母を見るのが辛かった。
自然と私は帰りが遅くなった。
友達と公園で遊んだり、ひとりで丘の上に行ってみたり。
その時によって場所は違ったのに、彼は必ず私を迎えにきた。
私の好きな駄菓子だったり、時にはいびつな花冠を手にして。
差し出された手を掴んで立ち上がっても、もう彼の視線は私より下ではなかった。

「ほら、帰るぞ」
「・・・うん」
「ばーちゃん、待ってるんだろ」
「・・・ねぇ、せーちゃん」
「なんだよ」
「おばあちゃんも、いつか、死んじゃうのかな」
「・・・」
「おばあちゃんが居なくなったら、私・・・」
「そりゃ、いつかは死ぬだろうな」
「・・・」
「でも、それは明日じゃないだろ?ずっと先かも知れないだろ?」
「おばあちゃんが居なくなったら、麻実、ひとりぼっちだよ」
「そしたらうちに来ればいい」
「せーちゃんちに?」
「兄貴になってやるよ」
「・・・同い年なのに?」

私が小さく笑うと、彼は嬉しそうに笑った。
だいたいいつまでせーちゃんって呼ぶ気だよ、と悪態をついても、振り向いてくれなかったことは一度だってなかった。
クラスメイトの前では照れ隠しのような言動も時々あったけれど、それでも彼は、いつだって優しかった。

まだ高い位置にある太陽が見える丘に、彼は迎えには来ない。

 
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