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今でこそ常にむっつりとした表情がイメージの彼だが、幼い頃の彼はそれはそれは可愛かった。
彼の母親の趣味で可愛い服を着せられた彼は一見女の子に見えた程だし、当時彼より背の大きかった私は彼の前を歩く事の方が多かった。
祖母から聞いた話だったり、写真から想像する事だったり。実際には覚えていない事の方が多いが一つだけ鮮明に覚えている出来事がある。
それは幼稚園に通っていたの頃の話。

「せーちゃん、麻実おうちかえりたい」
「どうして?」
「あのね、お花にお水あげるのわすれちゃったの。まいにちあげるってやくそくしたのに」
「やくそく?」
「うんママと。どうしようお花がしんじゃう」
「かえろう」
「え?」
「いっしょにかえろう」

泣きそうな顔をしていたであろう私にどうしたのと尋ねた彼は、私がわけを話すと私を連れて幼稚園から脱走した。
通り道である彼の家の前で、偶然庭先に出ていた彼のお母さんに見つかってすごく驚かれた。
優しい彼のお母さんは、花に水をあげさせてくれた。
そしてまた幼稚園におくられた私たちは先生に怒られたけれど、いつもはすぐ泣く彼がその日だけは泣かなかった。
私の手をひいた小さな背中が、初めて頼もしく見えた事をよく覚えている。

思えば私たちはずっと、ずっと一緒だった。

 
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