黒澤の姿を見なくなって4日。


「なんて・・・なんて快適なんだ!!」

「佐絵、心の声がもれてるよ」

「ご、ごめん・・・」

まだ講義の途中だというのについ、声に出してしまった。
私と離れたくないと駄々をこねる黒澤に、いつものようにああそうじゃあねと挨拶して別れてから4日。
黒澤は私の前に姿を現していない。

(まるで今生の別れみたいに目に涙を浮かべていたような気がしなくもないけど・・・でも、いつも通りだったような気もする。もう通常の行動がおかし過ぎて判断がつかん!)

黒澤のことだ。何も心配する事はない。
またいつの間にか背後に忍び寄っているに違いない。

(このまま以前の黒澤に戻ってくれたら万々歳だけど・・・そうだよね、そうかも知れない!いやきっとそうだ!奴はようやく私が可愛いなんて勘違いだったって気づいたんだよ!!)


「ひょ!!!」

――小さくガッツポーズを決めた瞬間、風を切る音と何かが机に刺さる音がした。
先生にまでは聞こえなかったようだが、周りの席の人は何事かとこちらを向いている。

(ダーツの矢・・・?な、なんか紙が巻き付けてある・・・)

机に刺さったダーツはどうやら矢文?のようだ。


『愛しの佐絵ちゃんへ
 寂しい思いをさせてごめんね。
 不肖黒澤、インフルエンザにかかってしまい寝込んでおりました。
 熱は下がったけどまだ保菌している可能性がある為今日は遠くから見守っています。
 佐絵ちゃんのつむじ今日も可愛い!!
 貴女の黒澤透より』


恐る恐るダーツが飛んできた方を振り返ると、マスクをした黒澤(心なしかやつれた気がする)がにこにこと手を振っていた。

私は先生に見えないように携帯を取り出し、ここ数日使っていなかった宛先にメールを送った。

『メールしろよ!!!』



大人しいとなんだか寂しいです

「ごめん、うっかりしてた・・・」

「100歩譲ってメールという手段を忘れたのは熱のせいだとして、だからってなんで矢文!?危ないでしょ!!」

「だって、近づいたらインフルうつしちゃうかも」

「そーだよ外に出るな!」

「だって佐絵ちゃんに会いたかったんだもん!!」

「うっとおしい。今すぐ帰れ!」

「・・・(ぐすん)」

「あーもう・・・夜、電話してあげるから!」


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