「おいしい!もう一個もらっていい?」

「いくらでもどうぞ〜調子乗って作り過ぎちゃったんだよね」

休日にみどりと一緒にパンを作った。
こねるのが楽しくなって具も色々試しながら作っていたら気づいたら膨大な量になってしまっていた。
学校に持ってくればなんとかなるかな、と思い持ってきたら評判は上々で、無駄にせずに済みそうでほっとしている。
もういっそパン教室にでも通って極めていくのもいいかも知れない。


「・・・視線が気になるのですが」

褒めてもらえたから嬉しい気分にひたりたいのに、騒ぐわけでもなく寄って来るでもなくひたすら注がれる視線に気が散ってしまう。

「なんなの?気になるの?だったら黒澤も食べればいいじゃん」

「・・・え!?いいの!?」

「私どんだけ酷いと奴だと思われてるの」

信じられない、という表情を浮かべながら恐る恐る近づいてくる黒澤にため息が出る。

「いつも勝手に私の書き損じとか飲み残しとか持っていくクセに何を今さら」

「それ、は・・・あくまでもう佐絵ちゃんにとって要らないモノであって・・・佐絵ちゃんの作ったモノが食べられるなんて・・・」

「変な所で律儀だな。でも要らないモノを収集される方が気味悪いんですけど!」

「これは・・・今食べてしまうのは勿体ない・・・!」

「都合の悪い時だけスルーするのやめてもらえるかな!」

「冷凍庫に入れれば・・・」

「日持ちするだろうけど味落ちるよ?」

「フリーズドライ・・・」

「非常食にでもする気ですか!?」

「だって!佐絵ちゃんの作ったパンだよ!?」

「知らないよ!お得意の写真でも撮ればいいじゃん・・・」

「は・・・!!」

「黒澤って馬鹿なの?首から下げて四六時中私に向けてるそれは何なの?」

「この写真だけでご飯3杯食べれる!!」

「・・・パンだけどね。やだもう疲れた」



食べちゃうぞが冗談に聞こえません

「いいの!?本当に食べちゃうよ!?」

「食べろよ!むしろ他に用途がある方が怖いわ!!」


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