木曜日


「ねぇ私って存在感してるよね!?」

「え?突然どうしたの?」
昼休み廊下で偶然会った黒澤くんに尋ねれば、いつも通りの豊かな表情でそう返してくれてなんだかほっとした。
「いや、なんかもうもしかしたら見えてないんじゃないかと思って」
「・・・それ、秋月の話?」
軽く首をかしげながら黒澤くんは隅の方に私を手招きする。
「私ってなんでモテないのかな」
「うん?」
「何が足りないんだと思う?」
「えーっと、話が飛んだような気がするのは俺だけかな」
「いや、そもそもね、海司がモテるっておかしくない?私自分がモテないのは海司のせいだと思ってたんだけど海司がモテてるって事は私に問題があるって事だよね??」
「・・・佐藤はモテないんじゃなくて鈍いんだと思う」
「空気読めないって事!?それショックなんだけど」
「うん、そういう所」
「え、今なんか読む所だった!?」
いつもと変わらない(ように見える)笑顔の黒澤くんからは何も読み取れない。
(結局私は何がいけないの!?誰か分かるように説明してよ・・・)

「佐藤、彼氏欲しいの?」
「もちろん欲しいよ!」
私の答えに黒澤くんは意外そうな顔をした。
「なんで?」
「なんでって・・・青春!みたいなの、よくない?」
「あー、分からなくもないけど・・・」
「でしょ?」
「文化祭一緒に回ったり?」
「そう!」
「修学旅行でこっそり待ち合わせしちゃったり?」
「それそれ!」
「彼氏の部活を見に行ったり、終わるの待ってみたり?」
「さっすが黒澤くん!分かってらっしゃる!!」
「じゃあ青春ごっこしよっか」
「・・・はい?」
「とりあえず放課後の待ち合わせからね。校門にしよう」
「え?あ、私部活あるんだけど」
「大丈夫だよ俺もあるから」
「あ、そう・・・」
「うん。じゃあまた帰りに!」
(あれ?なんでこうなった?何の話してたんだっけ?)
ワケが分からなくて頭を抱えたが、聞きたくても黒澤くんの姿はもうそこにはなかった。



なんとなく腑に落ちないと思いながらも部活を終えた私は校門に急いだ。
門に軽く寄りかかるようにして私を待っている(んだよね?)黒澤くんを見て、ちょっとときめく。
(青春、いいかも!)
「黒澤くん、待っ、」
ここはお決まりの台詞で行くべきだろうと飛び出すと、驚いたように体を起こした黒澤くんのずっと先に――海司が見えた。

ようやく私の方を見てくれた海司の視線が痛くて痛くて、楽しいと思った気持ちは一瞬で、風船みたいに破裂した。

 
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