日曜日


(・・・ぬくい)
ぼんやりと目覚めた私はぬくもりの正体を探るべく手を動かそうとして――ほとんど動かせない事に気づいた。

「は?・・・え!?」
目の前の光景が信じられず、固まっていると、ぬくもりの正体がうっすらと目を開けた。
「今、何時・・・」
「え?えーっと・・・7時、だけど」
「もう帰ってる時間ねぇな。朝練遅れちまう」
「毎日大変だねぇ」
「やりたくてやってんだからいーんだよ」
「そっかーって違うよ!ちょっとなんで普通なの海司!!」
そう。なんと私が目覚めた場所は寮の私のベッドで、ぬくもりの正体は海司だったのだ。(慌ててみどりのベッドを確認したらなぜか空だった)


(あっれーおかしいな?私たち喧嘩してなかったっけ?夢?ってどっちが夢?喧嘩してたのが夢?今が夢?)
混乱している私をよそに、海司は大きくあくびをすると体を起こそうとしていた私を再び布団の中に引きずり込んだ。
「もう少し寝かせろ」
そういいながら機嫌よさげに目を閉じる海司に私はさらに混乱する。
(なんなのこの空気!まるで恋人同士みたいな・・・違うよね?私と海司付き合ってないよね?だって私昨日自分の気持ちに気づいたばっかりなのに・・・)

「そっか。やっぱり夢か!」
じゃあ私も寝よう、と思って目を閉じたらおでこをはたかれた。
「待て待て待て。美咲お前、どこまで覚えてる?」
めんどくさい夢だなー、と思いながらも私は目を閉じたまま答えた。
「えー?・・・海司に勝手にしろって言われた」
「・・・そこからかよ」
「そら先輩が海司がモテるとか言ってー、私も恋したいって言ったらそら先輩に俺と恋しちゃう?って言われてー」
「は!?」
「真壁くんすっごい可愛いから彼女にどう?って言おうと思ったのに海司は私のことさけてるしー」
「え?ちょ、意味が分かんねぇんだけど」
「なんかもうめんどくさいなー、って思ってたら先生たちにちゃんと考えろって言われてー」
「おま、めんどくさいとか言うか!?」
「黒澤くんに青春ごっこしようって言われたんだけど・・・あんまり楽しくなかった」
「あれはそういう事だったのか・・・」
「あとー、清墨先輩の家来になった。メロンパン同盟組んだ」
「どういう状況か全く想像出来ん」
「昴先輩に鍛えてもらおうと思って学校行ったら・・・海司が、女の子と、居た」
「見てたのか・・・」
「以上。私の一週間でした!」
せっかく海司が近くに居る夢をみているのに。思い出したらまた悲しくなってきてしまった。
泣きそうな顔を隠そうと布団にもぐったら、腕を引っ張られてすぐに外に出された。
「あれは・・・告白、されたんだけど、断ったよ。俺には好きな奴が居るから」
「・・・そう」
海司が断ったことを喜んでいいのか、好きな人が居るということを悲しんだ方がいいのか分からなくて、私は素っ気ない返事をした。
「その後美咲が泣いてるから来いって昴先輩から連絡来て、行ったらお前はもう寝てて・・・」
しかし海司は私の反応は特に気にならなかったようで、淡々と話を続ける。
「どういう事が詰め寄ったら、泣かせたのはお前なんだから八つ当たりすんなって、昴先輩に言われたよ」

「悪かった。ちょっとムキになってたんだ。お前があまりにも色んな事を気にしな過ぎるから」

「しかしお前は俺が居なくても楽しそうにやってるし、他の人たちはここぞとばかりに攻め込んでくるし、俺は最悪な一週間だったよ」
「・・・私だって最悪だったし」
「ん?なんつった?」
私の髪を手ですく海司があまりに優しい表情をしていて息が詰まってしまう。
私の幼なじみは、いつの間にこんな表情をするようになったのだろう。
(こんな表情見たら――さすがに私だって、分かるよ。たぶん、きっと)
「海司!いつもとなんか違う!キモイ!」
喧嘩を売っても、もう海司は買ってくれなかった。

「鈍感な美咲に気づいてもらうにはこのくらいしねーと無理って事が分かったからな。がんがんいくから覚悟しとけよ」


(・・・もう、気づいているけど)
たぶん私の気のせいじゃないと思う。
でも、肝心な所が決まらない海司が好きだ。
青春もしたいけど、今はこのぬくもりに甘えていたいから。まだ、私の気持ちは教えてあげない。
(一週間も私のこと放っておいた海司が悪いんだから!!)
明日からの毎日を想像して、私は海司の胸に顔を押し付けてゆるむ頬を隠した――。









*an afterword
学パロやりたいな、と思っていた時ちょうど本家で学園生活編が配信されたので設定をお借りして挑戦してみました。
みんな出せて楽しかったのですが、何か色々足りない気が……。
少しでも楽しんでもらえたら、嬉しいです。最後までお付き合いくださりありがとうございました!
20140322


 
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